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「ピークがずれてしまった」男子バレーなぜ負けた? “日本代表の頭脳”伊藤健士コーチがSVリーグ開幕前に明かした危機感「宮浦の涙はショックでした」
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米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJVA/AFLO
posted2025/10/31 17:02
バレーボール日本代表ロラン・ティリ監督を“右腕”として支える伊藤健士コーチ(44歳)。代表活動を終えると、すぐに所属元の大阪ブルテオンに戻り、SVリーグ開幕に向けて準備に奔走していた
ロラン・ティリ監督の就任1年目だった今年の日本代表は、コーチにとっても難しいシーズンだった。実は世界選手権に臨む前から、伊藤は危うさを感じていたという。
「今年最初の大会だったネーションズリーグは、フレッシュさがあったし、永露(元稀)や大宅(真樹)という、これまで何度も落選して苦しい思いをしてきた選手があれだけ活躍してくれたのは僕にとってもすごく嬉しいことでした。ただ、その後の8月の薩摩川内合宿はかなり特殊な合宿でした。7日間ぶっ通しで1日も休みなくやり切った。最終日の紅白戦は、体に疲労がきているはずなのに、みんなボールを落とさず、すごくレベルの高いバレーをしていた。『みんなでこの合宿を乗り切ろう』という意志が感じられました。でもその分、その後のNTC(ナショナルトレーニングセンター)合宿が心配でした。
少し休みはあったものの、体は絶対に疲れていたし、モチベーション的にも難しかったと思う。今年の新メンバーは、今年が勝負だという気持ちがあったと思いますが、昨年までも主力だった、例えば小野寺(太志)や石川(祐希)といった選手からは心の疲弊感を感じていました。しかもその後、タイトなスケジュールで壮行試合が予定されていましたから」
難しかった五輪翌年のピーキング
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9月2、3日にはブルガリア、6、7日にはイタリアと、観客を入れた壮行試合を行い、10日にフィリピンへ出発するという慌ただしいスケジュール。被ブロックの多さや強力なサーブへの対処など、壮行試合で見えた課題をクリアにする時間がないまま大会に突入してしまった。
「ピークがずれてしまったというのがあったと思います。加えて、初戦のトルコの仕上がりが非常によかった。日本が本調子で行っていてもどうなったかわからないぐらい。その初戦に0-3で敗れて、みんなダメージを負った。もともと心が疲弊していましたし。
今年は、SVリーグが長くなり、パリ五輪メンバーの中のある人は休んでいて、ある人は活動したり遅れて合流したり。活動している人の中には、『なんでやっているんだろう?』という思いがもしかしたらあったかもしれない。新体制1年目の難しさと、五輪翌年の気持ちの整理の仕方、いろいろなものが重なって、ばらつきが見られ、それをうまくまとめられなかったという反省があります」
それでも、流れを変えるチャンスはあった。伊藤が悔やむのはカナダ戦だ。
「絶対に(勝てる)可能性がある試合だったんですけど……」

