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「あれはルイス・エンリケの懲罰」「宝の持ち腐れだった才能が…」 元問題児FWを筆頭に“PSG無双”バロンドール選出誌編集長が明かす
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2025/10/05 17:00
PSGを欧州ナンバーワンに導いた名将ルイス・エンリケ
私は彼がプロデビューした17歳のころから知っているが、原石としての輝きは誰の目にも明らかだった。天性のドリブラーでプレーはスペクタクル。だがそこで壁にぶつかった。次のレベルに到達するまで、彼はキリアン・エムバペと比べると多くの時間を要した。怪我もあったし、現在に比べるとプロ意識も欠いていたのだろう。若さゆえの奔放さもあった。
スペクタクルだが得点能力は高くはない。チャンスは作り出すが決められない。うぬぼれが強く不安定で決定力を欠くというのが、彼に対する長い間の評価だった。
だが、この6カ月というもの、彼がチームを勝利へと導くようになった。それもリバプールやアーセナルとのアウェーゲームのような重要な試合をだ。インテルとの決勝も、得点こそ決めなかったが3ゴールに彼は絡んだ。世界のトップ10に入る選手に彼は成長した。
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彼がここまでになるとは、誰にも想像できなかったし、私自身にも考えられなかった。宝の持ち腐れだった才能を彼はついに開花させ、チームを勝利に導く存在にまでなった」
あれはルイス・エンリケの懲罰だった
――それもまたルイス・エンリケの貢献が大きかったのでしょうか。
「彼が選手たちを覚醒させた。ルイス・エンリケはデンベレをトップで起用した。それまでのデンベレは、サイドでプレーするドリブラーだった。そこから切り込んでいくのが彼のスタイルだったが、中央でプレーするようになりPSGは本物のマシンへと変貌を遂げた。
同時に本人の自覚も大きい。28歳になって、成熟したのは間違いない。いろいろ思うところはあったのだろう。戦術面でチームの戦い方に影響を与えたのに加えて、人間的な側面でも変化は大きかった。この点については外部からはなかなかうかがい知れないが、ルイス・エンリケは自身のプロジェクトにデンベレを適応させて、まるで猟犬のように全力で守備をする選手へと変貌させた。GKに対するプレスはその典型だ。それこそがエンリケがチーム内に引き起こしたことであり、デンベレを再生させた。デンベレは監督の言葉をよく聞き、決して逆らうことはなかった。それが彼自身を、新たな高みに導くことに気づいたからだ。
ルイス・エンリケは、リーグフェイズのアーセナル戦(24年10月1日)でPSGは0対2で敗れたが、彼はデンベレを試合のサブにも入れなかった。確信は持てないが、それはルイス・エンリケによるデンベレへの懲罰だった。厳しさやプロ意識の欠如を感じたのだろう。試合に出たければチームのためにもっと動けという無言のメッセージで、デンベレがそれを理解し、実践するまで数カ月がかかった。生まれ変わった新しいデンベレを、われわれが目にしたのは12月から1月にかけてだった。そのときの彼は、もはや以前の彼ではなかった」
PSGの時代はこれからも続くのか
――PSGの時代はこれからしばらく続くと思いますか?

