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“昨季はJ3福島でプレー”大関友翔20歳「なぜ急成長して日本代表に?」鬼木達の金言も…苦しい環境で「リアルに感じた」サッカー選手としての“本質”
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いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2025/09/25 11:36
川崎フロンターレの大関友翔。昨季はJ3の福島ユナイテッドFCで8得点をマークし、飛躍を遂げた
本田圭佑を想起させる“自己改革”
結果がついてきたことで、試合ではゴールに対するアクションをとにかく増やした。そしてゴール前へのスプリントを続けていくと、目の前にボールがこぼれてきて、自然と得点を重ねるようになっていく。やっていることは実にシンプルだが、気づけば好循環のサイクルに入っていた。
「最初は不思議でしたね。ワンタッチで流し込むだけのゴールが多かったんですけど、パワーをかけてゴール前に入っていくと、やっぱりボールがこぼれてくるんです。守備でのスプリントも評価されますけど、インサイドハーフでゴール前に入っていくスプリントをシュウヘイさん(寺田監督)はミーティングでよく褒めてくれたので、意識してやれていました。最後は自然と体が動く感じになっていましたから、つくづく意識って大事なんだなと思います。それが染みついた1年間でした」
この年、32試合で8得点を記録した。J3のベストイレブンにも選出された。こうした大関の変化を聞きながら、どこか重なったエピソードがある。
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それは、オランダ時代の本田圭佑が行った自己改革だ。
所属しているVVVフェンロが2部に降格した後、本田はマインドを変え、ゴールにこだわるプレースタイルに着手した。自分を劇的に変えるために、それまでの過去を全否定する覚悟でサッカーに取り組んだという。そして36試合に出場し16得点を記録。1部復帰の立役者となった。自己改革に成功した本田は、数年後にACミランで10番を背負うまでになっている。
そんな自己改革エピソードを大関に振ってみると、「僕の場合は過去の自分を否定はしなかったです」と笑った。そして、こんな風に続ける。
「自分の中ではゴール前にランニングしていく意識を変えただけだと思うので、そんなに大変じゃなかったです。過去の自分にプラスアルファできれば、フロンターレでも活躍できるかなというのを模索しながら、でした。ただアシストだけではなく、ゴール決められる選手はやはり評価されるんだなっていうのは感じた1年でしたね」
「福島に行ってそれをより一層、リアルに感じたんです」
福島という未知の場所で過ごしたシーズンは、単に出場機会や得点数を増やしただけではなかった。恵まれているとはいえない環境の中で、サッカーの本質に向き合い続けた日々でもあった。
川崎フロンターレの練習環境は日本でもトップレベルだが、福島にはクラブハウスもなく、筋トレをするにも30分かけて屋外のトレーニング場に足を運ばないといけなかった。その中で最高のパフォーマンスを出すための試行錯誤を続けた。

