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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「自分は最強でも最速でもない」井上尚弥の“刺客”アフマダリエフ激白「総合力で勝つ」2年待った決戦前に不気味な発言…同門カルデナスから助言は?
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2025/09/01 11:04
9月14日に井上尚弥との一戦を控えるムロジョン・アフマダリエフ
――井上はあなたを「キャリア最高の相手かもしれない」と高く評価していますが、あなたも以前から井上をリスペクトしてきた印象があります。あなたにとって、井上尚弥とはどういう存在なのでしょう?
「まず私は日本の人々が持つ謙虚さと礼儀正しさをよく理解しているから、イノウエが自分を褒めようと悪く言おうと、個人的に気にすることはない。日本人は私たちと同じように“尊敬”を大切にする民族だし、私たち中央アジアの人間も同じ価値観で育ってきた。だから彼の言葉がどうあろうと関係ない。結局リングに上がれば戦うしかないし、私の言葉も同じで、何を言うかより、彼の実績がすべてを物語っている。
イノウエは下の階級からクラスを上げながら、常に最前線で結果を残してきた。歴史上、同じように階級を超えて挑んだ名選手は多くいるが、イノウエも間違いなくその一人だ。もちろんマニー・パッキャオのようにもっと多くの階級を制覇した例もあり、イノウエはフェザー級が限界だという声も出ているのかもしれない。たとえそうだとしても、イノウエは2階級で4団体統一を成し遂げたという事実に変わりはない。これは歴史に残る偉業だ。だから私が彼を最高だと思うかどうかは問題ではない。実際にリングで証明しているのだから。
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私はイノウエの実績を心から尊敬しているし、彼が達成したことをリスペクトしている。それと同時に自分には彼を倒す力があると信じている。どんな相手でも自分が勝てると信じてきたし、その信念は今回も変わらない」
「“あのダウン”に特別な意味は感じない」
――ラスベガスで5月に行われたラモン・カルデナス戦では、井上がダウンを喫したことが喧伝されました。それでも最終的には井上がKO勝利で防衛を果たしています。あのダウンシーンと試合結果をどう振り返りますか?
「正直、あのダウンに特別な意味は感じなかった。ボクシングでは顔やボディにパンチが飛び交うし、タイミング次第で誰でも倒れることはある。一発のパンチで人生が変わることだってあるし、日本のリングで幾つかの悲劇が起こったことは誰もがご存じの通りだ。それがこのスポーツの残酷さであり、同時に孤独さでもある。だから私はリングに上がるすべての選手に敬意を抱いている。
大事なのは、イノウエがダウンを喫しても立ち上がり、結局は勝ったという事実だ。私は幸運にもまだ経験していないが、どれだけ偉大なボクサーでも倒れることはあるし、重要なのはそこから立ち上がれるかどうか。イノウエは嵐を耐え抜き、最後まで強さを示した。そこから見えるのは“戦士の心”であり、決して諦めない姿勢だ。あの試合から学ぶべきことがあるとすれば、その点に尽きると思う」
――同じカリフォルニアのジムで練習する同門のカルデナスが井上と戦ったことで、あなたにとって参考になりましたか?
「ラモンとは仲間であり友人だけど、彼と私はスタイルがまったく違う。彼に通用することが自分には通用しないかもしれないし、その逆もある。だからラモンの試合から技術的に取り入れるものは特にない。ただ、自分のチームがイノウエを“生で見られた”ということ、それが唯一の参考材料だね」
――ではカルデナスから直接アドバイスをもらってはいないのでしょうか?
「いや、そういうのはまったくない」


