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「新日本からしたら“ふざけんな”」葛西純と大流血戦、女子レスラーとの試合も…なぜエル・デスペラードは傷だらけでデスマッチを続けるのか?
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/08/24 17:00
新日本プロレスのIWGPジュニアヘビー級チャンピオンでありながら、デスマッチのリングに上がり続けるエル・デスペラード
勝った葛西「人間は年齢なんかじゃねえ」
5月2日には、葛西が所属するFREEDOMSにデスペラードが出場。メキシコのビオレント・ジャックと組み、葛西&杉浦透と対戦した。杉浦はFREEDOMS王者でありジャックも過去4度の戴冠歴がある。またしてもデスマッチのトップたちに囲まれての試合だった。
「このままでは引き下がれない」と葛西のホームに乗り込んだデスペラード。ジャックとは旧知の仲だという。杉浦とは若手時代に対戦している。葛西も含め、それぞれがデスペラードとの間に“尊敬と嫉妬”の感情を抱いていると言っていい。試合のタイトルも、この言葉をスペイン語にした「Respeto y Envidia」。遺恨や因縁ではなく、尊敬と嫉妬をぶつけ合うデスマッチなのだと葛西は言った。
ここでも勝ったのは葛西だ。
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「デスペ氏、お前を尊敬している以上に嫉妬心を燃やしてるんだよ。だから齢50でこういう試合ができるんだ。人間は年齢なんかじゃねえ。尊敬と嫉妬でいくらでも強くなれるんだ」
インタビュースペースでは、試合前にデスペラードから贈られた黒い薔薇の花束から5本だけ返すとコメントした。曰く「5本の薔薇の花言葉は“あなたに会えてよかった”だからな」。
デスペラードの本音「会社からしたら“ふざけんな”だと思う」
もちろんデスペラードの“尊敬と嫉妬”も燃え上がる。6月24日、久々のシングル対決にはIWGPジュニアのベルトがかけられた。それもまた心意気だ。
「正直、新日本プロレスは本当は俺にデスマッチさせたくないっていうのを感じるんですよ。直接言われたわけじゃないけど」
FREEDOMSでの試合後にデスペラードは言った。普段とは違う試合形式、ましてデスマッチではケガの可能性も高くなるだろう。ベルトを持った選手が負ければ団体にとってもマイナスだ。デスペラードは葛西とのタイトルマッチを望んだ。「会社からしたら“ふざけんな”だと思う」と言いながら。
だが新日本の懐も深い。デスペラードのデスマッチ出場を認め続け、王座戦もデスマッチに。デスペラードが雪辱を果たしたこの試合は、意外なところからの反応にもつながった。

