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格闘技PRESSBACK NUMBER
嘲笑された柔道金メダリスト、元横綱もファンに見放され…なぜ他競技からの“プロレス転向”は難しいのか? 失敗から考えるウルフアロン「成功のカギ」
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2025/07/06 17:04
新日本プロレス入団を発表した柔道金メダリストのウルフアロン。過去には多くの“転向組”がプロレスへの適応に苦労した
ウルフアロンの“トーク力”は武器になるか
プロレスは対戦相手との技のやりとりだけではなく、観客との対話が求められるものだ。ソツなく何でもこなせたとしても、ファンの支持を必ずしも受けられるわけではない。のちにブレイクするが、1984年のロサンゼルス五輪レスリング男子グレコローマンスタイル90kg級代表の馳浩(現・石川県知事)も新人時代はまさにそこで苦悩していた。元横綱・双羽黒こと北尾光司も、ファンの気持ちを逆撫でするような行動に終始したばかりか、長州力やジョン・テンタに暴言を吐きまくり居場所をなくしてしまった。
観客や視聴者は大技を連発したからといって見入ってくれるわけではない。レスラー側はそのときの自分に何が求められているかを敏感に察知しないといけない。その察知能力には、センスも必要になってくる。
幸いウルフはトーク力がずば抜けている。テレビのバラエティ番組でも達者なトーク術は評判を呼んだ。実際、筆者がインタビューしたときも自虐ネタも交え、気の効いたアンサーが戻ってくることが多かった。話下手なアスリートにありがちな「そうですね」といった相槌では終わらない。そのスキルをトラッシュトークで活かせば、百人力ではないのか。
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6月23日の記者会見で新日本の棚橋弘至社長は「入団したからには業界を担う選手になってほしい」とエールを贈った。坂口でも、小川でも、ヘーシンクでも、ルスカでもなく。令和の五輪金メダリストとして、ウルフには無人の荒野を切り開いてほしい。
<前編とあわせてお読みください>

