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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「白川はおっぱい揺らしとけばいい」人気女子レスラーが味わった悔しさ…スターダムから米国に渡った白川未奈の告白「楽しいと思ったことはほとんどなかった」
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byShiro Miyake
posted2025/06/30 17:00
スターダムからアメリカAEWに移籍した女子プロレスラーの白川未奈
東京女子プロレスのアメリカ大会はコロナ禍によって中止に。他の団体も同様だった。そんな中、白川はスターダムで闘うことを決意する。AEW旗揚げ前、スターダムは紫雷イオ(現イヨ・スカイ)、宝城カイリ(現カイリ・セイン)と2人の選手をWWEに送り出していた。30歳を過ぎてのデビュー、時間が豊富にあるわけでもなかった。
「白川はおっぱい揺らしとけばいいんだ」
同年10月から参戦したスターダムは、東京女子プロレスとは「リングで求められるものが何もかも違いました」。
東京女子は基本技重視、技と技をつなぐ“間”もたっぷり取る。逆にスターダムの試合は手数が多く、技のレパートリーも豊富で、何より“当たり”が激しい。
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白川は正面から技を受け切ることができず、先輩レスラーを激怒させてしまったこともある。技を受け切れないとケガのリスクがあるし、何より相手の技の見栄え、迫力を殺してしまう。とにかくまた一から実力をつけるしかなかった。
後に意気投合しユニットを結成する舞華は「(白川が)嫌いだった」と言う。ともにスターダムに移ってきたばかりの頃だ。「私が何もできなすぎて、闘いたくないと思われてたんです」と白川は振り返る。
「白川はおっぱい揺らしとけばいいんだ」
スターダムファンからの心ない声も聞こえてきたが、しだいに誰もが彼女の活躍を無視できなくなっていた。2023年には横浜アリーナでのビッグマッチで“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダム王座を獲得する。倒した相手は最多防衛記録を持つ上谷沙弥だった。
「プロレスを楽しいと思ったことはほとんどなかった」
前年の挑戦では上谷の必殺技フェニックス・スプラッシュを顔面に直撃され、事実上のレフェリーストップ負け。アゴと口腔部を負傷、歯も折れていた。泥臭く、血も涙も流しながらスターダムのトップ戦線へ。看板タイトルの一つである白いベルトを獲得したことは大きな成果だった。
「でも達成感だけではなかったです。移籍してきた立場だから、結果を出さないと格好がつかないなってずっと思ってましたね。それは東京女子の人たちに対してもです。必死でやってきて、プロレスを楽しいと思ったことはほとんどなかったですね、この時は」

