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スポーツ物見遊山BACK NUMBER
「ヘイ、カール！」長嶋茂雄が“面白いおじさん”に変貌した12年の浪人生活…「鉄拳制裁も辞さない熱血指導者」のイメージを変えた伝説ギャグ漫画
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byJMPA
posted2025/06/16 11:06
キャスターとして参加した1988年ソウル五輪で競泳・鈴木大地（右）を激励する長嶋茂雄。12年間の“浪人時代”はメディアに引っ張りだこだった
監督解任以降、長嶋さんの人気は衰えることはなく、巨人軍やプロ野球という制約もなくなったことも手伝って、さまざまなメディアに呼ばれ続けていた。オフシーズンに入れば「長嶋、○○の監督就任へ」「○○球団が長嶋と極秘交渉」といったニュースがスポーツ紙や週刊誌を賑すのも恒例行事に。
この時期から、「ヘイ、カール！」「いわゆる一つの～」に代表されるミスター珍語録がピックアップされることも増え、現役時代の記憶がない世代にも「面白いおじさん」としてのキャラクターが周知されていくことになる。現在、タレントとして大成功している長嶋一茂の下地には、この時代に作られた父のコミカルなイメージも大きく作用しているはずだ。
漫才ブームの影響も後押し？
長嶋さんが監督を退いた80年といえば、漫才ブームの真っ只中。テレビに登場する有名人の珍発言や面白行動に対し、視聴者がツッこむという文化が日本社会に根付き始めていた。そんな時代に長嶋さんは格好の素材であり続けた。前述の『すすめ‼パイレーツ』劇中でおそらく初めて提示されたコミカルな魅力に、どんどん本物が寄せてくるという現象が起き始めていた。
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パイレーツの連載は長嶋さんの監督解任とほぼ同時期、80年秋に終了したが、藤田元司新監督、王助監督体制となり、原辰徳の入団も決まり新生ジャイアンツがスタートした頃に発表された短編漫画『劇画 それからのパイレーツ』は、千葉県に言い伝わる「犬が安来節をおどれば英雄が生まれる――」なる伝説にのっとり、ついに長嶋さんが自ら志願してパイレーツの監督に就任するというストーリー。実在するスポーツ選手等の取り扱いに神経を使う現在では考えられない破天荒な展開だった。
