NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「ものすごく意味のある1球」ヤクルト石川雅規45歳がいまも大切にする記念ボール…捕手・古田敦也の本当の凄さとは「相手は古田さんと勝負している感覚」
posted2025/06/16 17:00
古田敦也(ふるた・あつや)/1965年8月6日生、兵庫県出身。立命館大学、トヨタを経て'90年にドラフト2位でヤクルト入団。プロ初年度から正捕手となり、チームを5度のリーグ優勝(日本一4回)に導く。シーズン3割8回は捕手として歴代最多。'06年から'07年まで選手兼任監督。現在は野球解説者
text by

長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Hideki Sugiyama
発売中のNumber1121号に掲載の[証言構成]古田敦也 石川雅規/館山昌平/ギャオス内藤/岡林洋一「エースが目撃した本当の凄さ」より内容を一部抜粋してお届けします。
一体、古田は何が凄いのか?
球界最年長投手として2025年シーズンも先発マウンドに立ち続けるヤクルト・石川雅規。地元秋田の実家には、これまで彼が積み上げてきたさまざまな記念ボールが飾られている。その最前列、もっとも目立つ位置に置かれているボールには、石川の自筆でこんな言葉が刻まれている。
「古田さんに初めて受けてもらう!」
その上には「2002.2.5」とある。石川がプロ入りした'02年、沖縄・浦添キャンプで手にしたボールである。
ADVERTISEMENT
「たかがキャンプの、たかがブルペンでの1球かもしれないけど、僕にとってはものすごく意味のある1球でした。それ以降、プロ初勝利、50勝、100勝と節目のボールはたくさんあるけど、これは僕にとって意味のある一歩目のボール。すごく大切に思えたから、そのまま持って帰って今でも実家に飾っているんです」
今年でプロ24年目、約四半世紀にわたる現役生活の第一歩となる「たかが1球」を、今でも大切に保管するほど、石川にとって古田敦也の存在は大きい。一体、古田は何が凄いのか?
相手バッターは「古田と勝負している」感覚
「バッターだけでなく、ランナーや相手ベンチの動きなど、“一体、いくつ目があるんだろう?”というほど観察力と洞察力に優れ、まるで球場全体を見渡していたイメージです。そして、“あの場面のあのボールはこうだった”と記憶力もいい。相手バッターは、僕とではなく、古田さんと勝負している。そんな感覚でした」
観察力、洞察力、記憶力――。いずれも、野村克也が「名捕手の条件」として挙げていたものである。それに加えて、「古田さんは、いつもいいタイミングで、いいアドバイスをくれるんです」と石川は言う。
「毎年、シーズンオフが近づくと、“こんなボールがあったらいいな”ってボソッと言うんです。そのひと言があるから新しい球種を投げられるよう、オフの間にめちゃくちゃ練習するんです」
新人王を獲得した1年目のオフには「右打者にファウルを打たせるために」カットボールをマスターした。現在のウイニングショットである速いシンカーも、古田のひと言がきっかけとなって習得した。さらに、石川に多くの白星をもたらしたのが、プロ6年目にマスターしたシュートだ。
「古田さんの現役最終年となった'07年。開幕からずっと勝てない日が続きました。それまでもずっと“シュートをマスターしたらどうだ?”と言われていたけど、なかなか覚えることができなかった。でも、この年のシーズン中盤にようやく納得いくシュートを投げられるようになりました」
'07年中盤以降、石川は2回の完封劇を演じて復活への手応えをつかんだ。その結果、翌'08年には12勝を記録した。
「このときにはもう古田さんはユニフォームを脱いでいたけど、'08年に勝つことができたのは間違いなくその前年にマスターしたシュートのおかげでした」
館山が明かす古田のアドバイス
古田が口にした「こんなボールがあったらいいな」という言葉を、館山昌平も記憶している。「左の石川、右の館山」と称され、長年にわたってヤクルト投手陣を支えた館山が、古田とのやり取りを振り返る。
【続きを読む】サブスク「NumberPREMIER」内の【徹底取材】キャッチャー・古田敦也の本当の凄さとは何か?「近代野球を変えたのは野村克也と…」《石川雅規、館山昌平、ギャオス内藤、岡林洋一が証言》で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。
Number1121号『名捕手の思考法。』*書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします


