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獅子の遺伝子BACK NUMBER
伸び悩む菊池雄星に「お前はどっちがええねん」西武・炭谷銀仁朗が新聞記事を手に諭した日…“涌井秀章から武内夏暉まで”「投手との対話術」
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/06/03 11:03
若き日の菊池雄星と炭谷
「涌井さんという才能あふれるスーパースターがいたおかげで、僕がマスクをかぶらせてもらっていろいろな経験ができました。(プロ1年目の)シーズン後半の方はずっと週1で涌井さんが先発して、その日に僕がマスクをかぶらせてもらっていました。僕はただただ成長させてもらっただけです。
高卒1年目のガキが週1回スタメンでいろいろな経験をさせてもらえるのは今考えてみれば大きかったですよね。そういえばなぜ涌井さんのときは僕だったのか、監督の伊東(勤)さんには聞いたことがなかったですね。歳が近かったからじゃないですかね」
最初は涌井の投球術に引っ張られる形だったが、徐々にリードとはなにか、投手の長所を引き出すにはどうしたらいいかを考えていくようになったと振り返る。
炭谷とのタッグで進化した菊池
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「リードの楽しさを感じるようになったのは試合に常時出場するようになったころやと思います。1週間あったら6人の先発ピッチャーが投げて、中継ぎを含めたら14~15人のピッチャーと組むことになります。それぞれ特徴が違っていて、得意なボールも違う。その全員のピッチャーの特徴を思い浮かべながら、3連戦をいかに勝ち越すか。どうやって流れを作るかを考えるのが楽しかったですね。
計算が立つピッチャーがカード頭で投げることが多いですけど、シーズン中のローテーションによってはそれが崩れるときもあるじゃないですか。崩れたときにはどうしようか……とかね。それをコーチと話したり、考えたりするのが楽しいですよね」
そんななか、炭谷によって印象をガラリと変えた投手がいた。菊池雄星である。
ドラフトの前にはMLBからも注目され、鳴り物入りで2010年にライオンズに入団してきた菊池だったが2015年までは4勝、4勝、9勝、5勝、9勝と2桁勝利まであと一歩届かない、彼の類稀なポテンシャルを考えれば歯がゆさを感じるシーズンを送っていた。


