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久保建英23歳vsモドリッチ39歳「吹っ飛ばし、抜き去った」後の敬意…“マドリー栄光の10番”涙と笑顔の別れ「好きになった言葉を」
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中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2025/05/29 17:02

ラ・リーガ最終節で実現した久保建英vsモドリッチ。このマッチアップが見納めとなるのだろう
最終節に戦うベルナベウの舞台は、それだけで心を奮い立たせるのに事足りたはず。最前列がピッチから数メートルに設置された観客席は、ピッチレベルから眺めると垂直に見えるほどで、まさに敵の要塞に放り込まれたように感じる。
そんなスタジアム内観をバックに捉えた久保の表情は、研ぎ澄まされていた。
久保はマドリーからのレンタル選手として、マジョルカでスペインデビューしている。ソシエダに加入するまでレンタル移籍が続き、マドリーの一員としてリーガをプレーすることは叶わなかった。この完全なるアウェイの空間でこそ、自身の本領を発揮したかったはず。
久保の個の力はマドリー相手にも通用していたが
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開始早々、勢いそのままに右サイドを駆け上がる久保の姿があった。相対する左サイドバックのフラン・ガルシアからボールを奪うとそのままボックス内へ向かいゴールへの意志の強さを感じさせた。
しかし中盤のレギュラーを欠いた影響もあったか、チームは自陣に押し込まれる展開が長く続いた。久保は攻撃を牽引しようと得意のドリブルで仕掛けるものの、自陣深くからのスタートに。常に2人目、3人目からの厳しいマークにもあい、得点チャンスを作り出すまでには至らなかった。
その中でボックス内に侵入した久保が、狭い局面で相手を抜き去るシーンもあった。マドリーに対しても通用する個の力を見せた一方で、仲間の援護を欠く孤軍奮闘となった。
ソシエダは粘り強く耐え忍んだが38分、VARによりボックス内のハンドが認められPKを献上。エムバペにゴールを奪われてしまう。さらに83分にも、ビニシウスからのパスを受けたエムバペにゴールを許し、0-2で敗戦となった。
モドリッチに“最後の挨拶”をしたのは久保だった
モドリッチに視点を移すと――マドリーのナンバー10がCKキッカーとして観客席に近づくと、大きな歓声が起こり、多くの人たちがその勇姿を収めようとカメラを向けた。
久保とは序盤こそポジションの兼ね合いで交差することがなかったが、お互いがポジションを変えていく中で、39歳のモドリッチが23歳の久保を抜き去るシーン、また久保がモドリッチを吹っ飛ばして突き進んでいく見応えある場面もあった。
宴も終わりに近づいた87分、モドリッチの交代が告げられる。