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青学大でも、駒大でもなく…なぜいま高校生エースは“早稲田”を選ぶ? 花田勝彦監督「心がけるのは“教えすぎない”こと」「表現力は求められますね」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph by(L)Yuki Suenaga、(R)AFLO

posted2025/05/29 17:00

青学大でも、駒大でもなく…なぜいま高校生エースは“早稲田”を選ぶ? 花田勝彦監督「心がけるのは“教えすぎない”こと」「表現力は求められますね」<Number Web> photograph by (L)Yuki Suenaga、(R)AFLO

高校時代から全国大会で実績を持つ鈴木琉胤(八千代松蔭)や佐々木哲(佐久長聖)ら有力ランナーが続々と早大へ。その進学理由はどこにあるのか

 ただし、このメニューに取り組んでいたのは工藤ひとりだけ。花田監督はいう。

「練習メニューでS、A、Bといったグループ分けはありますが、出場する試合によっても変わってくるので、ほぼ選手個人に合わせた練習になります。今日の工藤はスピード系の練習を入れたいという本人の希望で、このメニューを入れました。私からは、力むのではなく、フォームを意識するように伝えました」

 このように早稲田では、練習メニューは監督と学生の協同作業によってつくられていく。花田監督は学生にすべてを与えない。

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「指導で心がけていることは、『教えすぎない』ということ。私が提示するのは、7割から8割程度です。それだけでは強くなれないので、プラスアルファを自分で考えるのがいまの早稲田のスタイルです。もちろんメニューの提案はしますが、それが絶対ではない。『10人いれば10通りの練習のやり方があっても良い』とは選手にも伝えていて、特にレース前の仕上げなどは本人と相談することもよくあります」

「で、どう思う?」…選手へ問いかける重要性

 勧誘の場で「期待しないで」と伝えるのは、「なにを教えてくれるの?」という空気が充満している時代においては珍しい。花田監督は、選手に問いかけ続けている。

「早稲田の練習量は他校に比べて、少ないはずです。月間走行距離で1000kmを走るようなことはありませんから。私はメニューを提示して、『で、どう思う?』と選手に問いかけてきました。今年、就任4年目を迎えて、選手たちは何が必要なのかを理解して、試合前の仕上げ練習は個別に独自メニューをやる選手も増えてきました」

 今年入学し、3000m障害で8分29秒05のU20歴代2位の記録を持ち、9月に行われる世界陸上の出場を射程圏に捉える佐々木哲は、花田監督からの問いかけに自問自答を繰り返している。

「高校時代から自分で考えなきゃダメだと思っていましたけど、実際に考えて練習をするとなると、結構むずかしいですね。でも、考えることが成長につながると思っています」

【次ページ】 なぜいま早稲田が「選ばれる」のか?

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