オリンピックPRESSBACK NUMBER

体操・杉原愛子が“史上初の快挙”のウラ側…ナゼ10年ぶりNHK杯優勝できた?「感謝の気持ちでいっぱいで…」杉原が見せた“予想を超える可能性” 

text by

矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

PROFILE

photograph byAFLO

posted2025/05/20 17:02

体操・杉原愛子が“史上初の快挙”のウラ側…ナゼ10年ぶりNHK杯優勝できた?「感謝の気持ちでいっぱいで…」杉原が見せた“予想を超える可能性”<Number Web> photograph by AFLO

10年ぶりのNHK杯優勝を飾った杉原愛子

得意の“ひねり技”だけではなくなった強み

 Dスコア5.800、Eスコア8.133、合計13.933点。ゆかは最終演技者の岸にとっても昨夏のパリ五輪で種目別7位に入っている得意種目だが、着地の際の動きの差で杉原がわずかに上回り、0.033点差で優勝が決まった。

 最大の武器は伸身および屈身の後方2回宙返りだ。ヒザや足首の開きがなく足先まで美しいうえに、高さやキレが以前よりも増し、着地を狙って止める余裕と技術がある。

 10代の頃の杉原は平均台で「スギハラ」の名のつく「足持ち2回ターン(E難度)」を使ったり、平均台の降り技やゆかの終末技で3回ひねりを使ったりするなど、ひねりを得意として世界と勝負していた。その強みは今もキープしており、今回のNHK杯でもゆかで「足持ち3回ターン(E難度)」を披露している。

ADVERTISEMENT

 一方で、もともと苦手だった訳ではない宙返り系の技も、武庫川女子短期大学に入って基礎技術の研究に取り組んでから大きく向上した。縦回転も横回転も高い水準のレベルであるのが今の杉原の強みだ。

“10年ぶり快挙”のウラにあった修正力

 4月の全日本個人総合選手権で出た課題をNHK杯でしっかり修正してきたところも素晴らしい。4月の試合では予選が段違い平行棒からのスタートだったため、「段違い平行棒→平均台→ゆか→跳馬」のローテーションで練習を積んだ。そのため、跳馬スタートで最後の4種目目にゆかの演技を行った決勝では、体力面の備えが不十分でフロアに手をつくミスが出た。

 NHK杯までの期間にはその修正に取り組んだ。疲労がたまった4種目目にゆかを行う想定の練習を積み、逆転での10年ぶりタイトル奪還につなげた。

「全日本で出た課題をしっかりクリアできたので、すごく自信につながった」。言葉と表情にすがすがしさがあふれる。

【次ページ】 世界でもメダル争いを…杉原の“予想を超える可能性”

BACK 1 2 3 NEXT
#杉原愛子
#岸里奈
#内村航平

体操の前後の記事

ページトップ