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井上尚弥の「右、右、右、右」エグい4連打でカルデナスが崩れ落ち…カメラマンが目の前で見た“決定的瞬間”「苦痛で顔がゆがみ…体がガクッと沈んだ」 

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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posted2025/05/10 11:30

井上尚弥の「右、右、右、右」エグい4連打でカルデナスが崩れ落ち…カメラマンが目の前で見た“決定的瞬間”「苦痛で顔がゆがみ…体がガクッと沈んだ」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

8回TKOでラモン・カルデナスを下した井上尚弥。現地ラスベガスのリングサイドで試合を撮影した福田直樹氏が語る“決定的瞬間”とは

目の前で見た“突き刺さるボディ”「体がガクッと…」

 6ラウンド中盤に井上選手の鋭い右のカウンターが入ってからは、いつストップになってもおかしくないなと構えながら撮影していました。それでも、カルデナス選手も本当に勇敢で芯が強い。7ラウンドの井上選手の猛攻で「これで止まるか」と思ったんですが、そこから左を打ち返してロープを背負わせる場面を作りましたからね。試合前に「覇気がない」なんて感じたのはまったくの勘違いだったな、と……。

 その直後、井上選手がダウンを奪った右、右、右、右の4連打は劇的でした。あれだけ続けて打てる持続力、あそこで畳みかけて倒せる勢いというのは本当にすごい。6ラウンドのカウンターも含めて、試合を通して右ストレートはキーパンチになっていたと思います。

 ジャブと右ストレートに加えて、もうひとつ強烈だったパンチをあげるなら、左右のボディでしょうか。7ラウンド中盤、たまたま目の前で井上選手の右ボディが突き刺さって、カルデナス選手の体がガクッと沈んだ瞬間があった。「このまま崩れて終わるかも」と思わせるほどの一撃でしたね。左ボディでも、カルデナスが苦痛に顔をゆがめるシーンがありました。

現地メディアの声「またイノウエを見たい」

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 ダウンを奪われての8ラウンドTKO勝ちという結果も、試合の内容も、決して完璧ではなかったとは思います。ただ、いつもの井上選手の精巧なボクシングとは違ったものになったことで、プラン通りにいかなくても倒し切るたくましさを感じました。試合としての面白さも格別でしたね。

 結果論ですが、ダウンを奪われてから明らかに会場のボルテージが上がった。そこから打ち合って、打ち勝って、盛り返すという展開は、アメリカ人が大好きなボクシングそのもの。観客は大満足だったでしょうし、現地のメディアも「またイノウエを見たい」とおおむね好意的な反応でした。カルデナス選手も敗れはしたものの、評価と知名度を上げたのは間違いないでしょう。

 個人的には、ちょうど10年前の5月のことを思い出しました。フロイド・メイウェザー・ジュニアとマニー・パッキャオの「世紀の一戦」が微妙な内容で終わった1週間後に、サウル・カネロ・アルバレスがジェームス・カークランドを派手にKOしてボクシング界の空気を変えた。今度はそのカネロが“塩試合”をやった直後に、井上選手がエキサイティングな試合でシンコ・デ・マヨのトリを務めた。ボクシング界の大きな流れの中心に日本人のボクサーがいるなんて、とてつもない話じゃないですか。

【次ページ】 「完封する技術ある」井上尚弥が打ち合いを選んだ理由

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