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「リングで死ぬ覚悟がある」井上尚弥に挑む29歳ラモン・カルデナスとは一体何者なのか?「イノウエが私を軽視している、なんて騒ぐつもりはない」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byMikey Williams/Top Rank
posted2025/05/01 11:02

井上尚弥に挑戦するラモン・カルデナス(29歳)
――あと1年も待てば井上はフェザー級に上がり、あなたは少し力の落ちる相手と戦って世界王者になるチャンスがあったかもしれません。それよりも最強の相手と戦いたかったのでしょうか?
RC 先ほども言った通り、最高の相手と戦わなければ自分が世界最高のボクサーとは思えない。私がイノウエを尊敬しているのは、彼が強いボクサーと戦ってきたからだ。スーパーバンタム級に昇級後、真っ先に2冠王者のスティーブン・フルトンと拳を交えた。その後、あと2つのタイトルを持ったマーロン・タパレスと戦い、4団体統一王者になった。バンタム級でも常に強敵と対戦し、圧倒していたのはご存じの通り。そんな選手への挑戦を望むのは当然のことだ。仰る通り、イノウエにこの階級でしばらく自由にさせ、上の階級へ行くのを待つこともできたのだろう。ただ、私はそれよりも自分の力を試してみたかった。
――井上と戦えば軽量級選手としてかなりの高額報酬が望めると思いますが、それほど交渉もしなかったんですか?
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RC マネージャーにはすべての条件を受け入れるようにと頼んだ。プロモーターのサンプソン・レウコビッチにも同じだ。何を言われても、「はい、はい、はい、はい、はい、やります」と言ってくれと(笑)。一時は有力候補だったアラン・ピカソは報酬の値段を吊り上げようとしたんだろうが、私は「あれが欲しい」「これが欲しい」と主張し、この試合を逃すことは避けたかった。
「私はリングで死ぬ覚悟がある」
――あなたは非常にバランスがいいボクサーという印象ですが、自身のボクシングで最も誇りに思っているのはどこでしょう?
RC 粘り強さだ。ボクシングにおける強さにはさまざまな要素があるが、1つ言えるのは、トップレベルでは誰もが一定以上の強さを持っているということ。そんな中で私は前の試合でダウンを喫しても、立ち上がって全力で戦い続けた。負けたくないという気持ちと底力をそういった形で示せたと思っている。
――今の話にあった通り、あなたは2月8日に行われたブライアン・アコスタとの前哨戦で3-0の判定勝ちを飾ったものの、痛烈なダウンも喫しています。井上は軽量級では破格の強打者として知られていますが、自身のタフネスは十分だと思いますか?
RC おかしな言い草だと思うかもしれないが、私はリングで死ぬ覚悟がある。世界王座の獲得という自身が望むものを達成するためには、命を懸ける覚悟があるということだ。そんな私のタフさはメキシコ人として育ったからこそ。父は私に弱みを見せるなと教え、タフに生きていけるように育ててくれた。そうやって成長し、ここまできたんだ。