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「ふてぶてしい態度、やめろ」田中将大に山崎武司は伝えた…「どこまで修正能力が!」11勝の高卒1年目より“9勝の2年目”が衝撃だったからこそ 

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間淳

間淳Jun Aida

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/04/26 17:02

「ふてぶてしい態度、やめろ」田中将大に山崎武司は伝えた…「どこまで修正能力が!」11勝の高卒1年目より“9勝の2年目”が衝撃だったからこそ<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

07年の交流戦、楽天対阪神でお立ち台に立って笑顔の楽天・田中将大と山崎武司

「コントロールはアバウトでしたが、真っ直ぐでファウルを取ったり、スライダーで内野ゴロを打たせたり、徐々に投球を組み立てられるようになっていました。球が速くても、変化球が鋭くても、ただ投げているだけではローテーションを守れませんし、2ケタ勝利もできません。一軍デビューしたばかりの投手は投げるだけで精一杯です。その中で、高卒ルーキーが登板の反省点や課題を理解して、次の登板に向けて修正する。将大が進化するスピードは他の投手とケタ違いでした」

 田中は最終的に1年目から11勝をマークした。1999年の松坂大輔氏(当時:西武)以来、高卒1年目で新人王にも輝いた。ただ、山崎氏が田中に驚愕したのは、2年目の春季キャンプだった。

「最大の課題が直っていたんです。どこまで修正能力が高いんだ……とびっくりしましたね」

“上手くなるのが難しい”クイックが改善されていた

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 高卒1年目で先発ローテーションの軸になっていた田中だったが、山崎氏はある弱点が気になっていた。それは、「クイック」だった。一塁の守備に就く機会も多かった山崎氏は「クイックができなくて走られ倒しましたから」と一塁走者が田中から悠々と盗塁を決める場面を何度も見ていた。

 山崎氏は長いプロ生活で、クイックが苦手な投手は引退するまでほとんど改善しないと感じていた。ところが、田中は1年目のシーズン終了から2年目のキャンプインまで、半年足らずでクイックを習得していたのだ。山崎氏が記憶をよみがえらせる。

「プロでもクイックを苦手にする投手は一向に上手くならないケースが多く、特に球が速い投手はクイックが得意ではない傾向があります。将大はキャンプの実戦やオープン戦で、球速を落とすことなくクイックで投げていました。この時、遠くない将来に日本では物足りなくなってメジャーで活躍する選手になると確信しました。ポテンシャルの高さに頼らず、常に上手くなるために何をすべきか考えて、その考えを体で表現できるわけですから」

ギアチェンジの必要性を早くから理解していた

 田中は2年目のシーズン、前年よりも少ない9勝に終わった。勝ち星は打線との兼ね合いもある。それに対し、ある程度は自分でコントロールできる防御率や四球数といった数字は改善した。活躍した翌年は相手に研究されて成績を残せない選手もいる中、田中は“2年目のジンクス”と無縁だった。

 山崎氏は田中が先発投手としてもう一段階、上のレベルを見据えていると見ていた。

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