「俺が『使うな』と言えば、どの球団も…」“巨人4位指名を拒否→ドラ1でプロ”を目指した異色選手の物語…心を折られた「球界の寝業師」からの一言 

　寝業師からの直言に背筋が凍る。根本の真意までは推し量れなかったが、今が「その時」ではないことだけは理解できた。

　ようやく目覚めたと、瀬戸山が言う。

「根本さんの話を聞いた時にね、『プロってそういう世界なんだ』と思いました。そこから『力をつけないといかん』と、必死にバットを振るようになりましたけど」

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　しかし、その時は終ぞ訪れなかった。

　社会人選手の場合、「プロに行く＝即戦力」でなければならない。ましてや25歳以上となれば、先発、中継ぎ、抑えと役割が多彩なピッチャーならまだしも、野手はスカウトから敬遠される傾向にある。いくら瀬戸山がバッティング向上に励んだとて、ドラフト候補として旬が過ぎてしまっていたのである。

「結局は根本さんからのひと言で、『プロは厳しい』と思ったんでしょうね」

もし、巨人に入っていたら――？

　高校でもそうだが、結果的に社会人でも大人の都合によって翻弄された側面もあった、プロへの道。だからこそ、キャリアを振り返る過程でよぎったこともあるはずではないか。

　もし、巨人に入っていたら――と。

「ありますよ」

　瀬戸山が即答する。

「プロって、実力がある奴が行くところなんでしょうけど、あっても行けない奴がいれば、なくても行ける奴だっている。そういう世界なんでしょうね。要はタイミングというか。でも、ひとつだけ言えるのは、高校から巨人に入っていたらすぐダメになっていましたよ」

　瀬戸山は達観したように当時を回想し、そして、若かりし頃の自分をダメ出しするように、にやりと口角を上げていた。

　こうして波乱万丈な球歴を経験した瀬戸山。「運命のドラフト」から45年が経った現在は、どうなっているのだろうか？

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