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角田裕毅は「目を瞑っても走れる鈴鹿」で気難しいレッドブルを乗りこなせるのか? 昇格後初レースにかかる期待と目標《F1日本GP開幕》
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2025/04/04 11:04

レッドブル昇格後初レースとなる日本GPへの抱負を「Q3進出」と控えめに語った角田
角田がこれから乗るレッドブルの今年のマシンは昨年のRB20を進化させた「RB21」だ。キャラクターの本質は大きく変わらないものの、まったく同じではない。そのRB21を角田は乗りこなせるのか。RB21の実車には乗っていないが、日本GPの前の週に角田はイギリスにあるレッドブルのファクトリーでシミュレーターの中でRB21をドライブしている。
「シミュレーターでRB21を走らせてみて感じたことは、もちろんみんながよくいう難しさも少し感じましたが、僕の中では難しいクルマというより、セットアップの方向性が全然違うなと感じました。僕が今まで考えて使っていたセットアップを少し変えなくければいけないなと。シミュレーターには2日間乗ってたくさんのセットアップを試しました。ある程度自分に合うセットアップも導き出せたので、あとは実際鈴鹿に行って試すだけです」
別次元のスピードへの適応
角田が対応しなければならないのは、マシンの違いだけではない。より速くなるスピードへの適応能力も求められる。
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前戦中国GPの予選で9位となった角田のタイムは1分31秒638。これに対して、4位だったフェルスタッペンは1分30秒817。つまり、コンマ8秒も速くラップしている。F1の世界で1周コンマ8秒は別次元ともいえるほど大きな差。角田はレッドブルのマシンを乗りこなすだけでなく、レーシング・ブルズのマシンでは経験できない別世界へ突入していくことになる。
角田は言う。
「まずはFP1(フリー走行1回目)の限られた時間でどれだけクルマを理解して、パフォーマンスを発揮させられるか。もちろん、予選でトップ10に入って、Q3に 進出したい。それ以上の、例えば表彰台についてはあまり頭にはないですが、もちろんそうなったらうれしい」
もし、そうならなかったとしても、角田に後悔はない。
「トップチームからのオファーはなかなかないし、 こういった機会が人生で巡ってくることもなかなかない。だから、(レッドブルのチーム代表のクリスチャン・)ホーナーさんから正式に『これからレッドブルで、日本GPから走る』ということを聞かされたときは、『参戦します』と即答しました」
鈴鹿のレーシングスクールで育ち、鈴鹿のレースで鍛えられた角田。「鈴鹿は目を瞑ってでも走ることができる」と語っていた得意のサーキットで、今年角田の目にどんな光景が映るのか。その思いを共有したい。日本人にとって、25年の日本GPはそれを体験する週末になると言っても過言ではない。

