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甲子園の風BACK NUMBER
「激化するスカウト活動とは一線」「部員は1学年13人前後。育成時に進路提案」でセンバツ準優勝…名門・智弁和歌山を支える「ご縁」とは
text by

間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/02 11:01

センバツ準優勝を果たした智弁和歌山。部員数の少なさやスカウト活動など、名門校の中で独自の取り組みをしている
「みんなに活躍できる機会があるところが智弁和歌山の良さでもあります。部員が多すぎると選手一人ひとりに目が行き届かない面もあります。選手たちのゴールは高校野球ではありません。大学や社会人で野球を続ける上で高校時代に試合に出た経験は重要になりますし、指導者が選手の特徴を知っていれば選手に合った進路を提案できます。ご縁があって智弁和歌山に入ってきてくれたので、進路もサポートしたいと思っています」
もちろん、選手全員がベンチに入れるわけではない。だが、選手たちにはアピールするチャンスが与えられているのだ。
「一般的なスカウト活動はやっていません」
中谷監督も塩部長も口にする「ご縁」。この言葉に、他の強豪校とは異なる智弁和歌山のチームづくりが表れている。中谷監督が言う。
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「ご縁のあった選手たちと勝つためのベストな方法を模索しています。うちはスカウト活動をしていませんから」
強豪校は一般的に、全国各地を回って有望な中学生を視察して入学を勧める。全国大会で優勝したチームの主力選手らの中には、50校を超える高校から声をかけられるケースがあるほど、スカウト活動は激化している。しかし、智弁和歌山は、この競争に加わらない。チーム内には和歌山県外の選手も在籍しているが、いわゆるスカウト活動とは一線を画す。塩部長は、こう話す。
「うちの方針は智弁和歌山で野球がしたい選手に限って視察するスタンスです。良い選手がいると聞いて見に行って声をかけることはありません。中学生を全く見ないわけではありませんが、一般的なスカウト活動はやっていないと言えます」
「智弁和歌山で野球がしたい」球児を生かす監督の役割
智弁和歌山への入学は「智弁和歌山で野球がしたい希望」がなければ、スタート地点に立てない。どれだけ全国的に有名でも、その気持ちがない選手は対象外となる。例えば、今大会は木製バットの使用で注目された大谷魁亜選手は「自分は和歌山出身で、ずっと智弁和歌山に憧れていました」と入学の理由を明かす。
この選手たちの特徴を生かすのが中谷監督の役割となる。<つづく>

