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王貞治「1000本いけた」、金田正一「巨人を憎み、そして愛した」原辰徳「ジャイアンツには聖域がある」…Numberが記録した巨人軍レジェンドたちの言葉 

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柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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posted2025/03/31 10:00

王貞治「1000本いけた」、金田正一「巨人を憎み、そして愛した」原辰徳「ジャイアンツには聖域がある」…Numberが記録した巨人軍レジェンドたちの言葉<Number Web>

『読売巨人軍90周年+NEXT「伝説のナイン・ストーリーズ」issued by Number』の表紙は新旧ユニフォームの通常版のほかに限定版が3種。写真はONバージョン

STORY(4) 4番の重圧

「巨人の4番」には打順以上の意味がある。原辰徳は引退の挨拶で「ジャイアンツには聖域がある。自分はそれを守るために、努力しつづけてきた」と語った。その真意を明らかにしたのが、[悲運の4番の詩と真実]原辰徳「僕は、あの骨折からもう自分のバッティングができなくなっていた」。(阿部珠樹=文/379号/1995年)である。

 おそらく巨人の4番を純粋に楽しんだのは長嶋茂雄だけだったのではないか。その後に“聖域”を守った選手たちはプレッシャーに耐え続けることになった。第64代4番の清原和博もその一人。[先達が語る]清原和博 再び背負う4番の重圧。(永谷脩=文/571号/2003年)からは、その重みが伝わってくる。

 それに対して、現役の岡本和真は歴代の4番とは少し異なる意識を持っているようだ。STORY(9)の最新インタビュー[心優しき大黒柱]岡本和真「その左胸に宿るもの」を読むと、時代の変化を感じる。

STORY(5) 死闘の果て

 長嶋茂雄がサヨナラホームランを放った1959年の天覧試合や、中日と同率首位で最終決戦に挑んだ1994年の「10・8」など、巨人には今も語り種となっている名勝負がある。それらを振り返る記事もたびたび作られてきた。その決定版が、指揮官と登板全投手の証言 ドキュメント10・8 史上最大の戦い。(鷲田康=文/790号/2011年)である。

 なぜ巨人が勝ち、中日は負けたのか。筆者の鷲田康氏は監督、選手への綿密な取材から、その理由を探っていく。見えてきたのは「負けること」への拒否感だった。鷲田氏は今回、そのテーマをさらに掘り下げ、新たな巨人論をまとめあげた。それがSTORY(6)に掲載した[歴代OB連続インタビュー]Gの宿命である。

STORY(6) ジャイアンツとは

 巨人が巨人たりえている理由のひとつに、ある種の純血主義がある。移籍選手や外国人に頼った時期もあるが、チームの中核にはいつも生え抜きの選手がいた。監督になるのも、生え抜きの選手のみだ。

 生え抜きの選手を猛練習で鍛えあげるのも巨人の伝統である。その苛烈さを明らかにしたのが、[証言構成]多摩川と伊東「地獄」が育てた「純正巨人軍」。(永谷脩=文/733号/2009年)である。

 また、王貞治が巨人の選手の宿命について語った75周年ビッグインタビュー 王貞治「選ばれし者には使命がある」(永谷脩=文/733号/2009年)も必読。ダイエー、ソフトバンクの監督としての経験も踏まえ、大きな視野からの巨人論が語られる。

STORY(7) 時代を継ぐ者

 V9の偉業は、ある意味“呪い”となって、その後の監督、選手たちを苦しめた。しかし、常勝の宿命と重圧の中で戦うからこそ、巨人の選手は錬磨され、一流になっていく。長嶋茂雄は、そのことを誰よりも深く理解していたのだろう。巨人を離れていた時代も含め、いつもジャイアンツの選手たちを見守り、指導し、後継者を育てることに余念がなかった。

 STORY(7)では、そんなミスター・ジャイアンツのDNAがいかにして受け継がれてきたのかに注目。[帝王学伝承の内幕]長嶋茂雄×原辰徳「非常と愛情と」(鷲田康=文/751号/2010年)、[長嶋巨人9年間の証言]長嶋茂雄×松井秀喜「絆は永遠に。」(中村計=文/828号/2013年)の2本を再録した。

STORY(8) ナンバーノンフィクション

 このムックを編集するにあたって、第一に考えたのが、「ナンバーノンフィクション」を読んでもらいたいということだった。

 スポーツライターの石田雄太氏は長年、桑田真澄を追い続けている。肘の故障から手術、リハビリへと至る過程を克明に描いた[ナンバーノンフィクション]桑田真澄「11年目のシャドウ・ピッチング」。(405・406号/1996年)は傑作のひとつ。続編「12年目のピッチャーズ・マウンド」。(415号/1997年)では、復活のマウンドに辿り着くまで揺れ続けた桑田の心理状態に迫る。今回は後者のみを掲載したが、通して読むとより深い感動が得られるだろう。

 もう一本は、二宮清純氏による[永遠のライバル]沢村栄治と景浦将「かく戦い、かく散れり」。(NumberPLUS 20世紀スポーツ最強伝説(3)/1999年)。プロ野球の黎明期に活躍した巨人のエースと阪神の主砲、その短くも鮮烈な人生を描いている。二人はともに戦争の犠牲となった。ただの昔ばなしではない。「戦争とスポーツ」を考えるという意味でも、現代性があると思う。

STORY(9) その先の未来へ

 最後は現役の選手、監督への新規インタビューを中心に構成した。先人たちが作り上げた「巨人」をどう受け継ぎ、未来を切り拓こうとしているのか。阿部慎之助監督、坂本勇人、岡本和真らが、それぞれの思いを語ってくれた。

 さらに、王貞治氏がメッセージを寄せてくれた。巨人とは何か——このムックを通貫するテーマに、ひとつの答えを与えてもらったように思う。STORY(1)から読み進め、“9回の裏”に辿り着いた読者にとっても、大きなカタルシスとなるのではないだろうか。

 野球を「読む」愉しみが、どうか読者のみなさんにも伝わりますように。

表紙には限定版・特別カバー装が3種あります。詳細は特設サイト「Side B with Number」でご確認ください。表紙には通常版に加え限定版・特別カバー装が3種あります。詳細は特設サイト「Side B with Number」でご確認ください。
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