テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
大谷翔平は大物OBでも新人記者でも“同じ取材態度”「良いことばかり書いてあるのがいい記事とは…」“馴れ合い不要”メディアとのブレない距離感
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/19 11:02

大谷翔平の番記者が日々感じる「メディアとの距離感」からは、彼の信念がにじみ出ている
大谷「特に伝えたいことはないですね。(キャンプは)シーズン前のやるべきことをやる場所だと思っているので。当然、メディアの前で話す機会はオフシーズンよりも増えますけど、それはそれとして、やることは変わらず、まずはシーズンに向けて準備する大事な期間だなとは思っています」
聞き手の女性アナウンサー、はたまたそのテレビ局は、大谷が発表した談話のようなメッセージが返ってくることを期待したのだろう。だが、大谷からすれば、もう談話は発表しているし、必要以上に騒ぎ立ててほしくない.表情や口調からそんな想いが読み取れた。
母校野球部の同級生が取材陣にいたとしても
もうひとつ、大谷らしいエピソードがある。
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2021年と2022年のオールスター戦の取材陣の中に、大谷のかつての仲間である花巻東野球部の同級生が複数人いた。しかし、いずれの年も彼らの滞在中に大谷が一緒に食事に出かけたり、時間を取って話したりする機会はなかったという。彼らと仲が悪いわけではない。練習の合間や囲み取材の直後などの隙に、大谷が彼らにちょっかいをかけることもあり、むしろ心を許している数少ない仲間のように見えた。
同校の3学年先輩である菊池雄星(ロサンゼルス・エンゼルス)は、自身の準備が忙しくても、後輩たちのひとりと食事に出かけていたので、かつての仲間であっても時間を作らないのは大谷特有だと思っている。
良いことばかり書いた記事が良い記事とは思ってないです
では、なぜ大谷はかつての仲間にまで一線を引いたのか。
そのヒントになるかもしれない大谷の言葉がある。プロになって数年目のオフの日本ハム2軍施設。大谷と私、別の記者がもうひとりという、今では考えられない少人数の囲み取材時のことだ。
柳原「ご自身の記事を見ることはありますか?」
大谷「Yahoo! で見ています。どの記者の方がどんな記事を書いているかは見ています。この人にこれを言うと、こういうことを書くんだって」
自身の記事には全く興味がないように見えていたので、これを聞いて少し驚いた。この流れで大谷は別の日にこうも言った。