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「野球界は変わらなければいけない」DeNA筒香嘉智が語った“データ重視への危惧”…私財2億円を投じた総合スポーツ施設で目指す“野球の未来” 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/03/20 11:01

「野球界は変わらなければいけない」DeNA筒香嘉智が語った“データ重視への危惧”…私財2億円を投じた総合スポーツ施設で目指す“野球の未来”<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智が語った野球の未来とは?

「何が正解、というのは分からないです。ただ、僕個人の考えとしては甲子園で勝つためだけに野球をするというのは違うと思いますね。甲子園に出たい子もいるし、高校で野球はやめるという子もいる。もちろんプロになりたいという子も。いろいろな人生があるからこそ、指導者の方は高校を卒業した後にも役立つ考え、思考回路に導いてほしいなと思っています」

重視するのは「結果」ではなく「過程」

 自身の活動としては大きな変化があった。2023年12月に、出身地の和歌山県に2億円もの私費を投じて建設した総合スポーツ施設「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」が完成。両翼100mで内外野ともに天然芝を使用した球場に加え、サブグラウンドや室内練習場も備えた施設で、少年野球チームや体操教室などの活動が本格的にスタートした。

 施設の管理・運営は兄の筒香裕史さんが中心となって行ない、兄弟の二人三脚で「子どもたちが失敗を恐れずのびのびとプレーできるチームづくり」を目指し挑戦を続けている。この社会貢献活動が評価され、昨年12月には「HEROs AWARD」を受賞した。

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「実際に子どもたちを見ると、凄く楽しそうに野球をやっていますよね。このアカデミーに来てくれてる子どもはチャレンジすることに抵抗がない子が多いのかなとは感じています」

 子どもたちの自主性を重んじて、コーチが罵声を浴びせるような指導はしない。重視しているのは、「結果」ではなく「過程」だ。

「例えば、小学1年生の子が集まって練習の順番待ちをしている時に、多くの方は『喋るなよ』と指導すると思うんですけど、1年生の子にとっては喋っているのが普通で、それを我慢している方が僕は不自然に感じる。でも、お喋りをしていて自分の番が来た時に出来ないのであれば、何で出来ないのか、しっかり話を聞いてやってみようか、他の子がやるのを見てみようか、となるわけです。子どもたちが自分で考えて答えを見つける“自然”を大切にしたい。その思いで指導者の方達も取り組んでくださっています」

 スタートしたばかりでまだ課題も多いというが、試行錯誤を繰り返しながらも大きな夢に向けてチャレンジは続く。

「もちろん、僕自身はプレイヤーとしてが最優先です。その上で、あと何年か経った時にアカデミーもいろいろなものが見えてくるんじゃないかなと思っています。今は小学部ですけど、中学部を作るのか、高校の部まで作るのか……。本当は高野連に属さなくても、アカデミーからドラフトできるシステムになっていったら、かなり幅は広がると思う。いろいろな家庭の事情もあるし、高校野球の部活に通えないお子さんもいるでしょうから。子どもたちが本当にやりたいことをやり続けられるように、いろいろなチャレンジをしていきたいと思っています」

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#筒香嘉智
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