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「野球界は変わらなければいけない」DeNA筒香嘉智が語った“データ重視への危惧”…私財2億円を投じた総合スポーツ施設で目指す“野球の未来” 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/03/20 11:01

「野球界は変わらなければいけない」DeNA筒香嘉智が語った“データ重視への危惧”…私財2億円を投じた総合スポーツ施設で目指す“野球の未来”<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智が語った野球の未来とは?

「基本的にはリーグ戦がほとんどです。でも、そのほかに夏休み期間中は帰省する学生のために、それぞれの地元でチームを作って試合をするサマーリーグというものもある。冬になればアメリカンフットボールやアイスホッケーをするというのも普通のことですしね」

 実際にロッカールームでチームメートから「ヨシはなんのスポーツをやっていたの?」と聞かれることも多かったという。トップレベルの選手でも野球一筋ではなく、子どもの頃から様々なスポーツに触れてきた経験がある。

「ごく自然に、いろいろなスポーツの話題になるんですよ。実際に、アメフトのボールを捕ったり投げたりする感覚が外野の守備に役立っているとか、速い球を投げられる基礎になっていると話していた選手もいた。体の扱い方という意味では、違うスポーツによって身につける部分も沢山あると感じました」

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 一方で、アメリカ生活を経て帰国した後に感じた“ギャップ”もあったという。

「今は映像やデータが簡単に手に入りますから、例えばアメリカで流行っている打ち方をアマチュア選手が見よう見まねで簡単に取り入れることもできる。正しく理解しているケースもありますが、似て非なるものになっていたり、実際にアメリカで教えているヒッティングコーチとは全く違うアプローチで日本の指導者が伝えているケースもある。情報が多くなっているのはいいけれど、その意味は本当に正しく理解されているのか……子ども達のためになっているのかはなかなか判断しづらいと感じます」

データ重視では感性が失われしまう

 野球界は急速に情報化が進む。アマチュアからプロ選手まで、スマホひとつでトップレベルの打撃や投球技術が分析できる時代だ。自分自身で試行錯誤したり、指導者に教えを乞うなど時間をかけて技術を培うより、手っ取り早く「見て真似をする」、「データ通りにプレーする」方が、いわゆる“タイパ”がいいのかもしれない。

「いい部分もあるけれど、データばかり重視することは、フィールドで自然に感じる感性が失われてしまう気がするんですよね。自分が持っている、自分にしかない感性って絶対に一人一人あると思うので、そこを削られるのは違うかなと思います」

 スポーツ界のデータ重視の流れに対する違和感は、今年1月に日米で野球殿堂入りしたイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)も「Number」1114号(2025年2月発売)のインタビューで語っている。パドレスのダルビッシュ有投手も以前、テレビ番組で「問題集と一緒で答えが横にあって解いていくのはあんまり面白くない」と同様の考えを明かしていた。

「そうなんですよね。自分の力で探した答えが10だとしたら、“目からもらう”答えは2とか3しか入ってこないイメージなんです。だからその情報に頼る選手は、また1週間後に違うことをやっている、1カ月後に違うことをやっている。その場しのぎを永遠に繰り返してる感じがあって、軸ができない、幹ができないように僕は感じてしまう。

 特に子どもたちにとっては、自分がなりたいものに向き合って、考えながら自分のものにしていく過程は凄く貴重だと思っているんです。誤魔化さない。その場しのぎをしないというのは本当に大事なこと。野球だけの話ではなく、社会に出た時もそうやって過ごしていく傾向が出てしまうのは心配だなと感じています」

何が正解、というのは分からない

 高校野球界に視点を移すと、ここ数年では今までとは違う流れも出てきた。日本高等学校野球連盟(高野連)に所属せず「甲子園を目指さない」ことを掲げる野球部も現れ、選手レベルでは、花巻東高からスタンフォード大学に進学した佐々木麟太郎や、桐朋高校からアスレチックスとマイナー契約を結んだ森井翔太郎のようなケースも出てきた。

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