濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「性格は一番プロレスに向いてる」ジュリアの評価…新人レスラー・咲村良子が語る“アイドルとプロレス”「気が強すぎるのも長所に」《特別グラビア》
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byShiro Miyake
posted2025/03/13 11:01

マリーゴールドの新人プロレスラー・咲村良子の特撮インタビュー
「アイドルとしては出せない」素顔もプロレスでは…
デビュー前のプロテスト、咲村は山岡聖怜と試合形式のスパーリングを行った。山岡はレスリングをベースに持ち、1月にデビューすると5戦目でタッグ王座を獲得した。そんな“スーパールーキー”とのスパーリングは「お互い気が強いので少しも譲らなくて、これはプロレスじゃないって言われました」。
お互いの技を受け、よさを引き出し合うのがプロレスだとすると、2人のスパーリングはプロレスとは呼べないものだったのだろう。デビュー前の2人にはその余裕がなく、ひたすら意地を張り合った。
「そこまで負けん気が強い自分は隠してましたね。アイドルとしては出せないですし。親が死んでもステージでは笑顔を見せるのがアイドル。でもプロレスは悲しさ苦しさも含めてお客さんにすべてを伝えるもの。だから気が強すぎるのも長所になる。
ADVERTISEMENT
それに聖怜ちゃんとは仲が悪いわけじゃないんです。お正月は私の家に来てすき焼き食べたり。嫌いじゃないけど思い切りやり合えるのがプロレスラー。ジャンプの漫画に出てくるようなライバル関係が理想ですね」
「性格は一番プロレスに向いてる」ジュリアからの言葉
どの先輩にも気が強いと言われた。憧れの存在であるジュリア(現WWE/NXT)からも。ジュリアは一番怒られた先輩だ。「口ごたえするな」と。咲村としては口ごたえのつもりはなく、疑問を素直に口にしただけだったのだが。
「昔から縦社会、体育会的な雰囲気になじめないんですよ。先輩だからって無条件でペコペコはしないですね」
たとえばマリーゴールドには、練習の際など新人は先輩より30分早く集合するという決まりがある。咲村は最初、従わなかった。ただ「早く来い」と言われても納得できなかった。リングのセッティングなど必要な仕事があると分かってからは、それに合わせて動くようになったが。
「芸能の仕事だと、演者が早く現場に行ってもスタッフさんに気を使わせてしまいますし。それに“ここは時間通りでいいのか、早く行くべきなのか”が本当に分からなくて。空気が読めないんです。合理的じゃないとやらないですね。それで嫌われるのは仕方ないと思ってます」
確かに先輩には嫌われるタイプかもしれない。だがジュリアがアメリカに渡ってから自伝を読んでみると、スパーリングで先輩に勝とうとする後輩は嫌われると書いてあった。
「私もそうなんです。ジュリアさん、私と同じだったんだって(笑)」
咲村曰く、プロレスは「はいかイエスしかない世界」。それでも納得できないものはできない。ジュリアは自分と似たものを咲村から感じていたのか。「性格は一番プロレスに向いてる」というジュリアの言葉は、咲村の心の支えになっているという。