テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「オオタニ、HR打ったね」隣の米国人記者がスマホ撮影…カオスな大谷翔平ドジャース取材現場「報道陣50人超。vs菊池雄星の質問にたどり着けず」
posted2025/03/05 17:00

MLB開幕に向けて準備を進める大谷翔平。ドジャースキャンプの取材現場はどのような雰囲気になっているのか
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph by
Nanae Suzuki
満席の記者席…初対面の米国人記者はスマホ片手に
砂漠気候のため、寒暖差の激しいアリゾナの気候にも大分慣れてきた。2025年2月28日。ドジャースとホワイトソックスのキャンプ地メイン球場「キャメルバックランチ」の記者席は三塁側の2階に上がったところにある。
試合開始5分前の午後6時5分に到着した私は、満席の記者席の最前列中央に1席だけ空席を見つけた。「Is this seat taken?」(この席は空いてますか?)。もうこの定型文を使って何年経っただろうか。運良く座った私はスコアシートを広げ、すぐにグラウンドに目を向けた。
初回、1回裏のドジャースの攻撃。薄暮の球場に昨季と同じ登場曲「The Show Goes On」が流れた。滑り止め用スプレーを宙に噴射し、バットのグリップ部分をクルクルとくぐらせるルーティンも昨季と同じ。打席に入る前に4度、素振りをしたドジャースの大谷翔平が歩を進めると、地鳴りのような歓声が響き渡った。
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左隣に座った初対面の米国人記者がスマートフォンで動画を撮影し始めた。初球、2球目、3球目……。全部撮影するつもりなのだろう。ちなみにMLBでは、放映権の関係で記者は撮影した試合動画をSNSなどに投稿することは固く禁じられており、自身の記録用として保存する以外の目的では使用できない。
いきなり本塁打…番記者たちは冷静だった一方で
とはいえ、大谷の2025年初打席。私も撮影した方がいい気がしてきた。試合から目を離さないようにしながら、スマートフォンのカメラで動画撮影を開始した。直後の6球目だった。エンゼルスの開幕投手に内定している菊池が投じたフルカウントからの真ん中高めの94マイル(約151キロ)を強振。火を吹くような打球は左翼フェンスを悠々と越えた。
同じ記者席に座っていたドジャースのデータ班によれば打球速度107マイル(約172キロ)、飛距離386フィート(約118メートル)。文句なしの一発だった。
オープン戦にも関わらず“大谷効果”でチケットは完売し、1万2271人が集結したスタンドのファンは総立ちで歓喜に沸いていた。
では、記者席はどうだったか。