魁皇の大相撲ボヤキ解説BACK NUMBER

「もう1場所見送るべき」賛否の声もあるが…元大関・魁皇が豊昇龍“横綱昇進”に見解「勝負師としてスゴい」「自分は優勝5回、綱取りは難しかった」 

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浅香山博之

浅香山博之Hiroyuki Asakayama

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posted2025/01/31 17:41

「もう1場所見送るべき」賛否の声もあるが…元大関・魁皇が豊昇龍“横綱昇進”に見解「勝負師としてスゴい」「自分は優勝5回、綱取りは難しかった」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

初場所千秋楽、優勝決定ともえ戦を制した直後の豊昇龍。モンゴル出身力士として6人目の横綱が誕生した

 13日目の大の里戦の豪快な首投げは、立ち合いからの圧力があるからこその投げ。今まで指摘されてもいましたが、安易に投げに行くと力が伝わらないし、墓穴を掘ることにもなる。でも、今場所は立ち合いの当たりからして圧力がありました。148キロと、幕内平均体重よりも少ないけれど、体は大きくなり過ぎるのもよくない。これからやっていくなかで、自分の力が一番に発揮できる適正の体重ってあるものです。この先まだまだ伸びていくだろうし、そういう体を作っていけばいいんですよ。

 不思議なことに、強くなる時は、無理に増やそうとしなくとも体が一回り二回りと大きくなっていくものなんです。周りにも、なぜかそういうふうに見えてくる。たとえば体重はそれほど増えていないのに、体の張りがあったり、まとった雰囲気で大きく見える時がある。これがまた相撲の面白いところなんですよね。なかなか他の競技では見られない。まあ、相撲取りは裸だから丸見えなんだけど(笑)。逆に小さく見えたりしぼんで見えたりすることもあるんですよ。

「クビのケガからよく帰ってきた」

 千秋楽まで単独トップだった前頭14枚目の金峰山が、優勝決定巴戦まで追いつかれてしまいました。それまでは金峰山がイケそうな雰囲気だったんですけどね。彼は入門以来順調に出世してきて10場所幕内にいたけれど、クビのケガで十両に落ちてしまった。でも十両優勝して幕内に戻ってきたばかりの場所でした。よく、新入幕でも新十両でも、壁に跳ね返されて一度落ちてしまう力士がいます。でも、そういう力士は往々にして強くなって帰って来てるんですよ。自分の場合は新入幕で4勝11敗して十両に落ち、3場所目で戻りましたが、跳ね返されて悔しさを味わい、さらに成長して戻って来る。それが本場所の成績に表れるんです。成長できる人間って強いですよ。勝負師っていうのは常に悔しい思いをして、それが糧となり、本領を発揮できるようになるものです。

優勝5回でも…「綱取りはこんなに難しい」

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 先の九州場所で初優勝し、綱取りに臨んだ大関琴櫻がまさかの5勝10敗。いろいろなことを考え過ぎたんでしょうね。どうしても「期待に応えなきゃ」「勝たなければ」などとの想いがあって自分を追い込んでしまい、自分にプレッシャーを掛け過ぎたのかなぁ。

 自分も綱取りの経験はあるけど――こう見えて5回優勝してますからね(笑)。自分の場合は、優勝すると、どうしても場所後に優勝の御挨拶とかメディアの取材などいろいろな行事ごとが増えて時間を取られ、調整がうまくできなかった。自分の弱さなんですが“余裕”がなくなってしまっていたんです。たとえば優勝できた場所は、ほとんどの時間を稽古と治療、トレーニングなど相撲のためだけに使い、自分の思うまま場所に臨めていた。それでいざ優勝できると、他に時間を取られてしまい、ルーティンの生活ができず翌場所までに調整が間に合わなかった。相撲だけに集中できる環境でなくなったなかで「勝たなきゃ」との想いだけが強くなり、逆に勝負ができなかったように思うんですよ。

【次ページ】 「いい子にしてるだけじゃ勝てない(笑)」

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