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「お前、死んだような顔しとんな」DeNA吉野光樹を覚醒させた伊勢大夢と三浦監督の助言…驚異の奪三振率の“脱力投法”で「今年はハマスタで勝つ!」
posted2025/01/27 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
先発投手の運用に苦しむことが多かった横浜DeNAベイスターズにあって、昨シーズン後半に台頭した吉野光樹の存在は、今シーズンの戦いに向け希望の光を与えてくれる。
「今年は最初からしっかりとアピールをして、先発ローテーションを勝ち取りたいと思います」
真っすぐな目で吉野は、そう言った。
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プロ2年目の昨季は、7月13日の巨人戦(東京ドーム)で初登板、初先発を果たすと、7試合でマウンドに立ち、3勝2敗、防御率4.31という数字を残している。
昨年のピッチングでとくに目を引いたのは、シーズン最終登板となった9月30日の阪神戦(甲子園)だろう。クライマックスシリーズ(CS)進出を懸けた重要な試合で、吉野は6回、無安打、6奪三振という完璧な仕事をし、ポストシーズンへの道を切り拓く役割を果たした。
「脱力投法」の勧め
このとき吉野は試合前、三浦大輔監督から「力を抜け」というアドバイスを受けていた。あのときの状況を吉野は振り返る。
「じつはそれまで全部が全部、100パーセントで投げていたんです。三浦監督の言葉を聞いて、よし思い切ってやってみようって。力を抜く、というか、力を入れるポイントをしっかりと決める。メリハリを大事にして投げたら、バッターの反応もよく、感覚もいいなって」
脱力をして投球動作に入り、リリースの瞬間だけを100パーセントにする。けれども言うは易しである。これまで始動から力を込めて投げてきた吉野にとって、このスタイルチェンジは勇気がいることだった。
「確かに大丈夫なのかなって思ったのですが、結果的にあの感覚を掴めたのは、今後の自分を考えてもすごく大きかったんです。あ、こんな感じでもいいんだって」
高橋宏斗以上の奪三振率
吉野の投手として特筆すべき部分は、その奪三振能力だ。今季は母数が少なく参考数字ながら奪三振率8.33というスタッツを残しており、これはセ・リーグで先発としてナンバーワンだった高橋宏斗(中日)の8.14という数字を上回る。
「プロになり、社会人レベルと比べると打者の能力も高く、ストライクゾーンも狭くなったり、最初は苦労したのですが、ようやく対応できるようになってきました。真っすぐでファウルを取ったり、フォークで空振りが取れたり、またこれまで投げていなかった球種をしっかり扱えるようになったのは自分にとって大きかったと思います」