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「イノウエと再戦したい」だが表情に浮かぶ本音は…井上尚弥にKOされた“敗者の弁”ドネア39歳「力を知る前に終わった」、キム・イェジュンも…
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/01/26 17:00
圧倒的な強さを見せ続ける井上尚弥。キム・イェジュン、ドネアら敗者が語った言葉とは
井上は直近3試合で「1回1分52秒」「1回1分10秒」「2回1分19秒」と連続での衝撃的な早期KO劇を積み重ねるなど、まさに昇竜の勢い。一方のドネアは5階級制覇のレジェンドだが、もうすぐ37歳を迎えるピークを過ぎた選手――大半がこのような印象だった。
しかし、リングに立てば誰よりも井上を追い詰めた男になった。2回に浴びせた左フックは井上の右目上をカットし、さらに試合後には右眼窩底と鼻の骨折が判明するほどの痛烈な一撃だった。9回にも右ストレートで井上をグラつかせるなど追い込んだが、11回に左ボディを浴びてダウンを奪われ、勝利するには井上を倒し切るしかなくなった。そんなファイナルラウンドも、ドネアの闘志は萎えなかった。
「回復した後に左フックの強打を狙い、一撃で倒す。私はそちらに賭けた」
「できる限り強いパンチを当てることに徹した」
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逆転KOを最後まで狙っていたのだった。結果は0-3の判定負け。それでも……。
「もちろんWBSSで優勝するためにリングに上がって、負けてしまったことに残念な気持ちはある。一方でこの試合に向けて一生懸命練習して、自分が今持っているすべてをリングの中で出し切れた。そういう意味ではがっかりしている気持ちと、誇らしい気持ちの両方がある」
井上の強さに慄く敗者の弁が多い中で、最も自らの強さを証明したのはドネアだったともいえる。
再戦で悪夢の早期KO…それでも「戦えて光栄に思う」
<名言3>
彼(井上)の力を知る前に試合が終わってしまった。
(ノニト・ドネア/Number1053号 2022年6月16日発売)
◇解説◇
2019年、WBSS決勝後のインタビューでドネアはこのように語ってもいた。
「次にまたやるとしても、負けると思って試合をすることはもちろんない」
つまり、再戦への意欲は非常に強く持っていたのだ。しかし、コロナ禍の2年半を経て実現した「井上-ドネア2」では、残酷な結末が待っていた。
39歳となったドネアが、再戦のリング上で井上と拳を交えた時間は、わずか4分24秒だけだった。

