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「もしも巨人ドラ1じゃなかったら?」松井秀喜がイチローに明かした“ドラフト1位の宿命”と“伝説の5敬遠”「背負ったものは…」《スペシャル対談》
posted2025/01/17 17:22
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Naoya Sanuki
【初出:発売中のNumber1112・1113号[スペシャル対談]イチロー×松井秀喜「ともに戦った日々を語ろう」より】
「もしもピカピカのドラ1じゃなかったら」
イチ あのさ、ヒデキ・マツイ、「格が高い」って言われない? それって最終的に備わったらいいなと憧れてることなんだけど、ほとんどの人は「箔」をつけることに必死で、「格」が備わらない。両方が備わっている人はなかなかいないけど、そこんとこどうなの?
松井 いやいや(苦笑)、でも、そういう人間性とか人格を自然と求められるところに私がいた、ということはあったかもしれませんね。ジャイアンツ、ヤンキース……。
イチ もしもジャイアンツに入るときにピカピカのドラ1じゃなかったら、もし僕みたいにドラフト4位だったら、そういう格が求められることって、あったと思う?
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松井 なかったかもしれませんね。スタート地点で背負っているものは違ったかも。
イチ そうだよね。それでも輝き続けている凄さがこの人にはあるわけで、僕はひねくれもののドラ4だから何したって影響ないもんね。当時のオリックス・ブルーウェーブは誰も見てくれてなかったし……。
松井 でも高卒でいきなり首位打者は獲れないですよ、ウエスタン・リーグで。
イチ それはまた別の話。僕の気持ちとすればプロに入ってしまえば、ドラ1もドラ4も関係なく力を見せるまで。そういう結果ではなく、スタート時点で背負っている宿命に潰される選手はいっぱいいただろうし、ピカピカのドラフト1位の重みは並大抵じゃない。そんな中でやってきたから、格が身についたのかな。
松井 それが当たり前だと普通に思えたことがよかったのかもしれませんね。背負うことをキツいとか面倒くさいと思わなかったのは、目の前に長嶋茂雄さんがいたからです。長嶋さんと王(貞治)さんがそれを背負ってきた人ですから、長嶋さんが常に目の前にいて、私に特別な愛情を注いでくれて……その姿を見ていたら、自分の中でひしひしと無意識のうちにそうしなくちゃいけないと感じたんでしょう。そのうち、そういう自分が本当の自分なのかもわからなくなってきて、自分自身は何者なんだと思うようになってきた。イチローさんと一緒に明るくお酒を呑む“ヒデキ・マツイ”も自分だし(笑)、たくさんのファンの前でこうでなくちゃいけないと思う“松井秀喜”も自分。どっちも本当の自分なんでしょうけど、それを無意識に使い分けちゃってるところはあるのかもしれません。
甲子園で5敬遠の伝説
イチ しかも高校時代から背負ってきたんだからなぁ……甲子園での5敬遠ね。敬遠でグラウンドにモノが投げ込まれて試合が止まったなんて、歴史上あれだけでしょ。