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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝“山の妖精”は「やっぱり“神”になりたかった」城西大・山本唯翔の5区への思い「(青学大・若林宏樹に)記録が破られて正直悔しい」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/01/07 17:22
実力的には「山の神」に遜色ないレベルの区間新記録を2度叩き出したが、一歩及ばず「山の妖精」とあだ名された山本唯翔
2年の時は、予選会15位で箱根を走れなかったが、3年では予選会を3位で突破。神になるべく、しっかりと準備をしてきた。
速く山を上る秘訣とは…
春は平地での走力、スピードをつけるためにトラックの競技に積極的に参加した。本格的に山の練習をスタートさせたのは、夏合宿からだった。上りの練習は脚力強化になるという櫛部静二監督の考えから、山本だけでなくメンバー全員で朝、山を走った。
「みんな、イヤだと言いながらも走っていました(苦笑)。僕としては、夏に一緒に山を走れたというのがすごく心強かったです」
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周囲からは、どうしたら上りを速く走れるのか、と質問されることがよくあったという。
「これをやっておけば、うまく山を上れるというのがあって。まず走る際、前傾姿勢を取るんですが、それにとらわれ過ぎてしまうと前傾になり過ぎて、うまく走れなくなります。もうひとつは腕振りですね。トラックとかで速い動きをする時は、腕を後ろに引くような動作がいいんですが、上りの時は逆で前に持ってくる方が速く上れるんです」
山本に言われた通りにすると、選手たちから「おぉー」という納得の声が上がり、ラクに上れるようになった。そうして、城西大は山で走力を磨いて第99回大会の箱根に臨んだ。
命名「山の妖精」
山本は13位で襷を受け、第96回大会で宮下隼人(東洋大)がマークした区間記録(70分25秒)を21秒更新する70分04秒で区間新記録を樹立。9位まで順位を押し上げた。だが、「神」とは呼ばれなかった。
「チームの順位(シード権)と自分の区間賞を目標にしていたのですが、この時は意外と速く走れたなという感じでした。ただ、タイム的にも、9位というチームの結果からしても、神になれるような感じではないと思っていたんです。
チームメイトからは『神だよ』と冷やかされたんですが、やっぱり神とは呼ばれない。その時、監督が考えて『山の妖精』と名づけてくれたんです。最初は恥ずかしくて嫌だったんですけど、徐々に浸透してきたので、それでもいいかなと思いました(笑)」
区間新を出して目標をクリアしたことで、4年生になった山本は5区から2区へと気持ちが揺らいだ。もう一度5区を走るなら、元祖「山の神」今井正人さんの記録(69分12秒/コースが現在とは若干異なる)を抜きたいと思ったが、一方で1年時に負けた鈴木を始め、各大学のエースと戦いたいとも思った。


