箱根駅伝“山の妖精”は「やっぱり“神”になりたかった」城西大・山本唯翔の5区への思い「（青学大・若林宏樹に）記録が破られて正直悔しい」 

「5区はもういいか」

「神じゃないですけど妖精になれたし、5区はもういいか、って思ったんです」

　そんな時、チーム内で2区に強力なライバルが出現した。それが2年下の斎藤将也だった。

「斎藤は1年の時から2区を走っていて、僕が4年になった時も2区希望でした。斎藤やヴィクター（キムタイ）には負けられない。自分もアピールしないといけないという意識を持ち、3人で強度の高い練習をこなしたことで走力が高まり、4年の5区に繋がっていったんです」

第99回大会で2区に登場した斎藤将也（右端）　©Yuki Suenaga

第100回大会は自分との戦いだった

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　第100回の記念大会、山本はチームの勝利のためにやはり5区を任された。3位で受けた襷をキープし、2分08秒差で前を行く2位の駒澤大を追った。

「4年の時は、周囲の選手は正直、見ていませんでした。これは自分との戦いで、自分が敵だという思いで走っていました」

　自分の内なるものと戦いながらも、戦略はしっかりと立てられていた。5区は、初代・山の神の今井正人から3代目・山の神の神野大地まで、小涌園前から最高到達地点までの4キロが他の選手と大きな差をつける区間と言われており、山本もそこに目をつけた。

「小涌園前から最高地点まで休まずに行くとタイムが伸びるというのは分かっていたので、『ここで行く』というのを頭に入れて走りました。それと、前回、小涌園前を越えたあたりで1回足が痙攣して攣りかけて、そこでタイムを伸ばせなかったんです。その準備をしっかりしてこなかったのと、寒いので給水をしっかりと取れなかったという反省点があったので、そこも改善しました」

下りをセーブするという判断

雨中の5区、タイムを確認しながら力走する山本　©Yuki Suenaga

　小涌園前から最高地点までのタイムは、3年時よりも50秒ほど縮めた。そこからの下りでは、青学大の若林宏樹が異常に速いペースでタイムを伸ばしていたが、山本は下りに若干の苦手意識があり、チームの結果を優先して、セーブして下った。

「その時、解説の今井（正人）さんには『下りで行けるかどうか』と言われていたそうです。確かに、下りで行ったら今井さんの記録を越えられたのかなとも思いましたけど、そこで無理な走りをして、最後の2キロで脚が止まってしまうのが嫌だったんです。

　ゴールまで全体を考えての判断でしたが、終わってみたらもうちょっと行けたかな……と思いました。ただ実は、最後の1キロ地点でラストスパートを掛けたんです。最終的に今井さんに届かなかったのですが、自分の中ではあれが最大のパフォーマンスだったと思います」

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