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「ドン底に突き落とされて、号泣して…」悲願の白いベルト戴冠…スターライト・キッドが語る“9年間”の思い「プロレスラー、人生、ドラマですね」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/01/05 17:42
白いベルトを掲げて笑顔を見せる“白虎”スターライト・キッド。デビューから9年、苦闘の末に念願のワンダー・オブ・スターダム王座を手にした
白いベルトの王者としての自覚もさっそく芽生えているようだ。
「もちろん強豪とも戦いたいし、ワンダーのベルトを狙ってくる新しい層とも戦いたい。私自身のためだけじゃなくて、女子プロレス界の全体の可能性をもっと広げるという意味もある。でも、誰でもいいってわけではない。私にYESと言わせる過程を作らなければね。だって、私がこんなにしんどい思いしてやっと取ったベルトですから。私はもっともっと、このベルトを重くしたいな。みなさんの目を私がひっくり返します」
なおもキッドは饒舌だった。
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「自分が自分への期待を裏切る、なんてことになっていたら、どうなっていたかわからない。もう本当にベルトに嫌われてるのかってくらい何回も挑戦しないと取れないこと、やっぱりこの苦しくて辛い時間が自分を成長させてくれた。なによりも諦めないことが大事なんだってわかった。このプロレス界で一番、私がそれを証明しているんじゃないかな」
「ドン底に突き落とされて、号泣して…」
少し前のことだが、キッドには闇落ちした「大江戸隊」の時代があった。
「闇落ちは役に立ちました。見放されていたハイスピードのベルトも8回目でようやく取れた。アーティスト(6人タッグ王座)もゴッデス(タッグ王座)も、大江戸隊にいて取れたし、自分のプロレスの幅が広がって、ラフファイトもできるようになった」
キッドは過去4回の白いベルトへのチャレンジ失敗を、その悔しさを噛みしめるように振り返った。
「最初はマスクに手をかけられて、試合後にはハサミまで入れられたジュリア戦。それから大江戸隊で勢いづき始めた時に中野たむに負けた。上谷(沙弥)への挑戦は『行けるやろ』みたいなとき、自信に満ち溢れていたのに勝てなくて、ドン底に突き落とされて、号泣してしまった。ランブルで挑戦の権利を勝ち取って、シングル初対決になった安納サオリ戦も……」
白いベルトはキッドの元になかなかやってきてくれなかった。「挑戦回数を重ねるたびに悔しさが増していくだけだった」という。言い換えれば、ベルトに対する強欲さが増していった4年間でもあった。