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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト会議で話題の「調査書」ウラ話…あるスカウト「届いたからイコール指名ではない」 慶大・清原正吾に各球団が“出さなかった”ワケは?
posted2024/11/06 17:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Nanae Suzuki
10月28日、高校野球・関東大会の横浜・保土ケ谷球場。
前の晩から降り続く冷たい雨に、10時の試合開始が11時になり、もう一度変更されて、3時間遅れの13時開始になった。
しかし、それでも、大方の観客の方たちは、球場に残る。入場整理券をもらって、ひたすら試合開始を待っている。
その中に、プロ野球スカウトの方たちも何人もおられて、ここの球場は小高い山の上にあるから風も強く、今日は強めの北風だから、待つ身はよけいに辛い。
最近のスカウトの方たちは、本当に真面目である。
昔だったら、「3時間? へん、冗談じゃない!」と怒ってさっさとお帰りになるか、麻雀の相手を集めてサッと姿を消すか(失礼!)……いずれにしても、今ほど辛抱強いスカウトの方はいらっしゃらなかったように記憶する。
ドラフト会議後でも…スカウトの仕事は終わらない
試合前のネット裏。
今日は、湘南ケーブルネットワークの中継がある。スタッフたちがテレビカメラの設置をしていると、すぐ横の席にいた楽天・部坂俊之スカウトが、彼らに「軍手」の差し入れをくださっている。
「今日は寒いでしょ、素手じゃあ。僕の母校の放送をしてくれるんだから、お世話になっているんだ。さあ、これ、使ってください、ないよりマシでしょ」
わざわざ、近くのコンビニまで足を運んで調達してきた軍手のようだ。
横浜高から亜細亜大、社会人・東芝府中から阪神タイガースに入団して、4年間およそ40イニングを投げた右のサイドハンドだった部坂スカウト。その後、台湾、カナダのプロ野球で投げて、帰国後は長く楽天のバッティング投手として働いてから、スカウトに転身した。
世間の水の冷たさを知っていればこそ、冷たい風にさらされながら働くテレビスタッフたちの辛さも察することができるのだろう。