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「頭が真っ白に」母の本音…ヤクルト2位指名、モイセエフ・ニキータの“ドラフト裏話” 密着記者が目撃した指名直前「監督とのあるやり取り」 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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posted2024/10/28 17:41

「頭が真っ白に」母の本音…ヤクルト2位指名、モイセエフ・ニキータの“ドラフト裏話” 密着記者が目撃した指名直前「監督とのあるやり取り」<Number Web> photograph by NumberWeb

ヤクルトからの指名を受け、家族と記念撮影に応じるモイセエフ・ニキータ

「こんにちは!」と気持ちのいい挨拶の声。すこし遅れて山野井部長が「モイセエフ・ニキータ選手、入場です!」と告げると、“本日の主役”が姿を見せた。部員たちの拍手を浴びて照れくさそうにしていたが、クリーニングに出したであろうシャツはパリッと襟が立っていた。

 会見場の最前列に座り、野球部員たちと談笑するモイセエフ。セルフィーを撮ったり、「宗山選手、どこいくかな?」と予想したりと、高校生らしいガヤガヤとした雰囲気が微笑ましい。

 16時30分ごろ、前方のスクリーンに「地元の高校No.1打者」としてCBCテレビの紹介VTRが流れ、「うおー!」と歓声が響いた。前日は不安を口にしていた長谷川監督も楽しげだ。指名前にもかかわらず、「いまのうちに、わちゃわちゃしてるところ撮ってもらおう」と集合写真の撮影までしていた。

モイセエフの顔は強張っていった

 これでもし指名されなかったら……。一抹の不安がよぎる。だが、事前の予想では上位指名の公算が大きいとされていた。焦点はむしろ、何位でどの球団に指名されるか、だ。

 17時、いよいよドラフト会議の中継がスタートした。なごやかな雰囲気から一転して、豊川高校の会見場も緊張感に包まれる。

 1巡目で宗山塁(明治大)が5球団、金丸夢斗(関西大)が4球団、西川史礁(青山学院大)が2球団から指名を受ける。単独指名はヤクルトの中村優斗(愛知工業大)のみ。「第1巡選択希望選手……」と読み上げられるたびに、モイセエフの顔がすこし強張っていくように見えた。膝の上においた両拳も、ぎゅっと強く握られている。

 中日の井上一樹監督が金丸の交渉権を獲得し、左腕を振り上げた瞬間、地元ということもあってか野球部員たちから「おおー」と声があがる。抽選を外した各球団の1位がふたたび読み上げられていく。モイセエフはじっとスクリーンを見つめている。

 12球団の1位指名が確定し、会見場が一度、緊張から解放される。隣に座っていた長谷川監督が、見るからに硬くなっていたモイセエフの肩をポンポンと叩く。なにごとか短い言葉をささやくと、年齢相応の笑顔が戻った。

指名の瞬間、大歓声で会見場の空気が…

 17時50分、2巡目の指名がスタートした。ここからは今季順位に基づいたウェーバー制だ。指名された瞬間に交渉権が確定する。西武、渡部聖弥(大阪商業大)。中日、吉田聖弥(西濃運輸)。オリックス、寺西成騎(日本体育大)。モイセエフは感情を押し殺してスクリーンを見つめる。

「第2巡選択希望選手、東京ヤクルト。モイセエフ……」

 その瞬間、会見場の空気が震えた。大歓声にかき消されて、後に続くはずの「……ニキータ。外野手、豊川高校」は聞こえない。カメラのフラッシュが焚かれ、この日一番の拍手が起こる。長谷川監督と握手をかわすモイセエフ。派手なリアクションはない。それでも、喜びは隠しようがなかった。

【次ページ】 指名直前、監督はモイセエフに囁いた「あせるなよ」

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