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「12球団調査書」「1位もある」中学時代“控え捕手”からドラフト候補投手に…神戸弘陵・村上泰斗を初めて見た日の“事件”「152キロだって…!?」 

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井上幸太

井上幸太Kota Inoue

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posted2024/10/23 17:12

「12球団調査書」「1位もある」中学時代“控え捕手”からドラフト候補投手に…神戸弘陵・村上泰斗を初めて見た日の“事件”「152キロだって…!?」<Number Web> photograph by Kota Inoue

筆者のスピードガンがたまたま計測した真偽不明の数字から、神戸弘陵・村上泰斗には「最速152キロ右腕」の称号が奉られたが…

 完全なる私事だが、3年ほど前にスピードガンを購入し、球場に行く際には携行している。日ごろの取材エリアにスピードガンが設置されていない球場が多いこと、しばしばささやかれる「この球場の球速表示は当てにならない」「右投手の数字は正確だが、左は怪しい」などの各球場が持つ“クセ”に振り回されたくないと感じるようになったことなどが理由だ。

 いつものようにスピードガンを構えていると、村上が快速球を立て続けに投げ込む。初球で145キロを計測すると、146、144、147、146、148、146……。2年生の夏前という時期を考慮すると、「結構速い」なんてものではなかった。

「いいものを観させてもらったな」と充足感に浸っていると、スピードガンに思いもよらぬ数字が表示される。それが、冒頭の「152」だ。この数字が出た瞬間、私は迷った。

スピードガンはどれくらい正確なのか

 一般的なスピードガンの仕組みについては、「ドップラー効果」などで調べてみてほしいが、その構造上、設置する角度によって誤差が生じる。より正確に計測するためには、投手の真正面(捕手の延長線上)が望ましいが、球場の構造上、バックネット裏の左右どちらかに偏って設置されているケースも少なくない。先に述べたような「A球場は左投手のスピードが出やすい」といった球場毎の特性には、この設置場所が大きく関係している。

 では、投手の真正面のベストポジションで計れば、すべて正確な球速になるかといえば、答えは「NO」だ。電波を利用している仕組み上、他の電子機器が発する電波との干渉で不正確な数字が出ることもあるし、特定のコースや高さでスピードが速く出るといった、機種ごとの特性も絡んでくる。例えば、私の使っている機種の場合、投手の左右問わず、引っ掛け気味に投じた外角のボールで異様に速い表示が出やすい。

 しかしながら、特性を考慮した上で、明らかな異常値を取り除いていけば、正確と断言できなくとも、ある程度信頼できる数字が並ぶ。

 だが、村上がたたき出した152キロは、実に判断しづらい数字だった。140キロ台前半で推移していた投手ならば、「何らかの影響で上振れした数字が出たな」と除外できる。けれども、村上は直前に140キロ台後半を計測しているため、150キロを超えてきても不自然ではない。あるいは、私のガンで速く出やすい傾向の「引っ掛けた外角のボール」なら流しただろうが、152キロを計測したのは高め。普段なら、おかしな数字が出づらいコースであり、目視でも相当な勢いを感じさせる1球だった。

 絶妙に真偽を判断しかねる「152キロ」。試合後、岡本に伝えるか、自分の中だけにとどめておくか。取り扱いに頭を巡らせていた際に、聞こえてきたのが大庭の声だった。

【次ページ】 「最速152キロ右腕」報道が

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