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「最後、信じて良かった」巨人4年ぶりのリーグ優勝に導いた阿部慎之助監督の選手起用…代打・坂本勇人と“神様のお告げ先発”オコエ瑠偉
posted2024/09/29 17:01
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
JIJI PRESS
球団創立90周年のメモリアルシーズンに、巨人が4年振りのセ・リーグ制覇を果たした。
「最高で〜す!」
現役時代のお立ち台の決め台詞で始まった阿部慎之助監督の優勝監督インタビュー。
「全員が同じ方向を向いて誰もソッポを向かなかった。選手は凄く苦しかったと思いますし、苦しいチームが勝つというのはこういうことだな、と実感できました」
昨年の監督就任。原辰徳前監督からバトンを受けた時を振り返った、阿部監督の目には光るものがあった。
あれから1年。ペナント奪回への道は、決して平坦なものではなかった。8月以降も阪神、広島と三つ巴の争いの中で、9月5日に首位に立ち、ようやくマジック9が点ったのが9月18日。しかしそこからも一進一退を続け、「この試合を負けると……」という局面が何度もあった。そういうピンチを凌いで勝利に結びつけたのが、就任1年目の阿部慎之助監督の巧みな選手起用だった。
「信じて良かった」坂本の代打起用
優勝を大きく手繰り寄せた9月23日の阪神戦。前日の同カードではベテランの坂本勇人内野手が3度の得点機に凡退。菅野智之投手の意地の完投も虚しく、0対1と今季19度目の完封負けを喫した。そして負ければ流れが一気に阪神へと傾く可能性のあった第2戦。この試合もホームは遠く0対0で迎えた7回だった。3番・吉川尚輝内野手と4番・岡本和真内野手の連打で作った無死一、三塁のチャンス。ここで阿部監督は前日の同じような場面で唇を噛み締め続けた坂本を、あえて代打で起用したのである。
「やっぱり……最後、信じて良かった」
こう語った指揮官の“信”に応えた坂本。ノーステップで必死に打ち返した打球が右前に弾み、スコアボードに貴重な1点が刻まれた。その1点を守りきっての勝利が、Vロードを一気に加速させることになった。
坂本のようなベテランだけではない。8月末から先発で起用してきた2年目の浅野翔吾外野手、苦しみながら最後の最後に「ショートのレギュラー」に育て上げた2年目の門脇誠内野手。小林誠司、大城卓三、岸田行倫の3捕手を巧みに使い分けた起用も優勝チームとしては異例のものだった……阿部監督の臨機応変の選手起用が勝利に向かって立ち止まりそうになるチームを動かしてきた。
「監督からは期待してないよって(笑)」
そんな阿部流の起用を象徴する選手が、もう1人いる。
「神様に言われました」
9月26日のDeNA戦後の監督会見だ。先発起用の理由を聞かれて、こう冗談めかして答えた選手が、この日、「2番・センター」に抜擢したオコエ瑠偉外野手だった。