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プロ野球PRESSBACK NUMBER
清宮幸太郎が覚醒、緻密な作戦も…「3年目の新庄剛志は何が変わった?」岩本勉が語る“新庄野球”の正体「実は野村克也監督の色違いなんです」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/28 11:01
指揮官として初のCS進出に導いた新庄剛志監督
先発投手ではFAで獲得した山崎福也と大黒柱の伊藤大海に加えて、加藤貴、バーヘイゲン、2年目の金村尚真と頼りになる存在がしっかり試合を作った。リリーフ陣に関しては場当たり的ではなく、1年間を見据えた起用ができたことが大きいと分析する。
「21歳を大抜擢」の新庄マジック
「柱となる投手は疲労を溜めないように上手に休ませて、その間に若い投手をふと一軍に上げて戦力を見極めている。チームにゆとりがあるんです。柳川(大晟)はそれがハマった典型だと思います。昨年からクローザーを務める田中正義は元々ガラスのハートな部分がありますからね。田中だけに負担がかかると、ある日ピキッとヒビが入った時に辛くなる。そこで試した柳川がぴたりとハマって夏場だけで8セーブですから。おかげで田中を見切り発車ではなく、万全な状態で一軍に上げることができた。あれは見事な新庄采配だったと思います」
柳川は21歳の育成出身右腕。8月6日に不調の田中正義が登録抹消となった際、新庄監督が「柳川君はちょっと面白いかな」と報道陣相手に唐突に名前を挙げた。それまでイースタンリーグでは今季18試合に登板し4勝2敗2セーブ。身長191cmの長身から最速157kmのストレートを投げ込む素質を見込み「いつかは(抑えに)しないといけない選手。こういうペナントレースの中で一気に成長させるのも一つの手ですから」と賭けた大胆なクローザー抜擢だった。
野村克也の“色違い”
「あの新庄監督の言葉を報道を聞いた柳川は、俺が抑えかと思って、その気になって球場来ますよね。選手って監督のコメントに自分の名前があるだけですごく嬉しい。自分は見てもらえている、息のかかった選手だぞ、と思える。逆にどんなに活躍しても『清宮は褒めない』と言うのも同じこと。彼の持っているものはこんなもんじゃないだろ、という言外のメッセージです。
新庄監督は本当にメディアの使い方が上手い。叱咤し激励してきちんとフォローする。僕は野村克也監督の“色違い”だと思ってます。キャラクターは全く違いますがやっていることは同じ。そりゃあ彼にとって阪神時代の恩師ですからね。実は二人はそっくりだと思ってますよ(笑)」
岩本氏と新庄監督は現役時代、2年間ともにプレーしている。「新庄が二枚目、岩本は三枚目」。そんな“棲み分け”で注目を集め、北海道移転後のファイターズを全国区の存在へと押し上げた。深い絆がある同学年の岩本へ、新庄監督は密かに「3年目の飛躍」を予言していた。(つづく)