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「イチローさんは200本安打の記録が途切れてから…」松山英樹が“超一流”に学んだ上昇志向…生涯賞金80億突破も、まだ「挑戦者」なワケ 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2024/09/06 11:02

「イチローさんは200本安打の記録が途切れてから…」松山英樹が“超一流”に学んだ上昇志向…生涯賞金80億突破も、まだ「挑戦者」なワケ<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

期待された「年間王者」の座は来季以降に持ち越しとなったが、プレーオフシリーズの最終戦に駒を進めた松山英樹(32歳)

 ひとつは直前試合の棄権理由になった腰の状態がわずかでも回復したこと。そして、ドライバーを新しいモデルにスイッチしたことだ。契約メーカーの未発表モデルを手に、開幕3日前の月曜日からテストを重ねて実戦で使用した。

 大一番でいきなり新しいクラブを使うのはリスキーという見方があるだろう。プレーヤーと道具の関係性は、人と人のそれにも似ていて、互いの性格の探り合いから始めるようなところがある。実際にラウンドの序盤は松山自身、「どういう感覚でやったらいいか」と試行錯誤を繰り返していた様子だった。

 ただ、それが敗因だったとは言い難い。むしろ、新しいクラブがあったからこそ満身創痍の身体を引きずって意欲的にプレーできたところもあったようにも感じた。ドライビングレンジで球を打ってはヘッドを眺め、細かな調整に余念がない。その様子がたまらなく楽しそうだった。

 シーズンも佳境に差し掛かると、松山に限らず選手の身体はボロボロだ。とくに今季はパリ五輪を挟んだこともあり、シェフラーだって腰が悲鳴を上げていた。今季の注目ルーキー、24歳のルドビグ・オーベリはシリーズ終了後にひざの手術を受けたという。疲弊した心身をいかにティイングエリアに向かわせるか。それは何もビッグマネーに限らない。

生涯獲得賞金は史上13番目

 かくして松山のシーズンは10月の日本開催ZOZOチャンピオンシップを含む秋季シリーズを前にいったん一区切り。「もうちょっと上位で戦いたい。常にトップ10、トップ5…で戦っていけば、メジャーで勝つチャンスも増えてくると思う」と残して一時帰国した。

 依然として挑戦者らしい言葉の半面、彼の立ち位置は改めて、多くの選手にとって見上げるものだ。

 今年のエリート30人のうち、ツアー選手権に10回以上出た経験があるのはアダム・スコット(13回/フェデックスカップ設立以前も含む)、ロリー・マキロイ(11回)と松山だけ。32歳の年齢はパトリック・カントレー、アン・ビョンフンと同じ12番目(最年長はスコットの44歳)。26勝のマキロイを頂点にする通算勝利数は、10勝で5番目だった。

 タイガー・ウッズを筆頭とする生涯獲得賞金で、松山の5540万1807ドルは史上13番目にランクされている。今大会のフィールドでは6番目とこちらも超一流と言うほかない。

【次ページ】 次戦は“世界選抜”として対抗戦に

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