日本での会見時、河村がジェイコブ・ギリヤードを引き合いに出したという話も聞いている。身長は約173cmながら、プレーメイキング能力を認められてグリズリーズから2ウェイ契約を得たギリヤードの存在はいい指標になっているのだろう。

身長172cmの河村にとって、似た体格のジェイコブ・ギリヤード（現ブルックリン・ネッツ）はポジティブなケースになる（2024年1月）©︎Getty Images

　ギリヤード、河村に目をつけたことから、グリズリーズがどんな選手を求めているのかというビジョンも見えてくる。日本では得点力も発揮した身長172cmの河村だが、アメリカで求められるのはパス能力。ジャ・モラント、ジャレン・ジャクソンJr.、デズモンド・ベーンなど多くの才能あるタレントを備えたグリズリーズに貢献すべく、プレーメイカーとしてアピールできるかどうかが鍵になるはずだ。

「待遇は今を大きく下回るだろう」

　最後になるが、河村のように日本でスターとしての立場を確立した選手にとって、2ウェイ契約、E-10契約は金銭面の恩恵が大きいわけではない。2ウェイ契約を得たとして、年俸はNBAの最低年俸である約110万ドルの半分ほど（注・これはフルシーズンの金額。シーズン途中からだと日割計算）。Gリーグでプレーするのであれば、年俸は約4万ドルに過ぎない。E-10契約の選手は傘下のGリーグチームにいけば契約の内容次第で最大7.75万ドル（昨季は7.5万ドルだった）のボーナスがもらえるが、それらを合わせても合計12万ドル程度にとどまる。

河村勇輝（2023年撮影）©︎Kiichi Matsumoto

　これらの金額は、おそらく河村が日本のBリーグで受け取っていたサラリーを大きく下回っているのだろう。ただ、そんな条件を知れば、逆に河村の“本気度”が見えてくるという見方もできる。目指すものは当面の高給ではない。23歳のPGは“長期視野でのNBA挑戦”という決意を持って渡米してくるに違いない。