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「あのタイプは大成しない」野球界の“通説”を覆した田宮裕涼(ゆあ)「プロは無理だぞ、諦めろ」から日本ハム入りを叶えた“最後の夏”の大逆転劇 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2024/07/23 11:04

「あのタイプは大成しない」野球界の“通説”を覆した田宮裕涼(ゆあ)「プロは無理だぞ、諦めろ」から日本ハム入りを叶えた“最後の夏”の大逆転劇<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

成田高時代の田宮裕涼。当時から“愛されキャラ”だったという

「大会前に、田宮には一つだけ言いました。『お前が三振したって何とも思わないんだから、振って三振してくれ。当てにいってヒットを打つより俺も気持ちがいいんだから』って。責任感が強い子なので、チームを勝たそうとして、ついうまく当てようとするんですよ。それがいい方向に行くこともあるけれど、僕としては歯痒かった。『バット振れねえやつなんて、プロも獲らないぞ』とあえてハッパをかけたんです」

奇跡を起こした「最後の夏」

 指揮官の言葉に腹を括った田宮は、春の大会での不調が嘘のように打棒を爆発させる。多古との初戦でいきなり2ランホームラン。千葉黎明との3回戦は3安打4打点と打線を牽引し、銚子商業との4回戦でも走者一掃のタイムリースリーベースを打ち試合を決めた。準々決勝では逆転の2ランを放つなどその勢いは止まらず、ノーシードから同校8年ぶりとなる決勝進出を果たした。

 甲子園出場をかけた決勝では木更津総合に2-10で敗れたが、終わってみれば田宮は6試合で打率.524、12打点。好リードに強肩と捕手としての資質も存分にアピールして、スカウトの目を釘付けにしたのだった。尾島監督は言う。

「よくあそこまで引っ張っていってくれました。田宮は誰よりも泣いていましたね。悔しい涙が8割くらい、自分がやり切ったという気持ちも2割くらいあったかもしれない。その心の内は聞いていないですけれど、僕は次につながる涙かなと思って見ていました」

ロッテ、DeNA、ヤクルトも…

 指揮官を感激させた大爆発は即ち、“条件”を堂々とクリアしたことも意味していた。

「僕が言い出したことですからしょうがない。一応『プロ志望届どうする?』って聞いたら嬉しそうに『出します!』って。分かった、と言うしかないですよ(笑)。あとは頼む、どこか指名してくれ! と祈るばかりでした」

 成田高には3、4球団から調査書が届いていた。積極的だったのは千葉の地元球団であるロッテとDeNA、ヤクルト。この年は全国的に高校生捕手のドラフト候補が少なかったこともあり、日本ハムも急遽、田宮を調査することになった。

【次ページ】 「勝負は5年先」

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