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野球善哉BACK NUMBER
「丸刈り完全否定」の違和感…甲子園の慶応報道に「なぜあんな形で取り上げられたのか」花咲徳栄の名将が本音“昔の高校野球は消滅”でいいのか?
posted2024/06/22 11:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
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昨夏の甲子園で慶応が2度目の制覇を果たすと、高校球界に大きなムーブメントが起こった。
「エンジョイベースボール」「髪型自由」「笑顔」
長髪でプレーする慶応ナインは常に笑顔で楽しそうだった。エンジョイベースボールを体現した選手たちのハキハキとしたインタビューは、かつての高校球児のそれとはまるで異なっていた。
「0か100か」の違和感
高校野球は新時代に突入した――。
慶応の載冠によってメディアは、「ノーサイン」「髪型自由」などを掲げるチームをこぞって称賛するようになった。
ただ一方で、違和感もあった。こうも簡単に高校野球が変わることの異常さだ。それまで104回、甲子園が開催されてきた高校野球が消滅してしまったかのように。数年前までは高校野球の中心にいた人たちの思想が、否定されたかのようでもあった。
「民族性なのかもしれないですけど、0か100かの捉え方になってしまっているなと思います。もう少しゆっくり、大らかであってもいいんじゃないかなと。昭和のメリット、デメリットはあるし、今のメリット、デメリットもある。現在ばかりを見て、過去と未来を見ないというのは私たちのやることじゃないと思います」
そう語るのは2017年に埼玉県勢として初、夏の甲子園を制した花咲徳栄の指揮官、岩井隆である。
近年、花咲徳栄OB選手の活躍が目覚ましい。2017年夏の甲子園優勝投手、清水達也は中日のセットアッパーとして活躍しているし、オリックスのリーグ3連覇に貢献した若月健矢も同校卒業生だ。このほか、西川愛也(西武)、愛斗(ロッテ)、韮澤雄也(広島)など、2016年から8年連続でプロを輩出している。
昔の高校野球は“個性を消す”?
岩井がチーム作りで必要としてきたものに「型」がある。そこには丸刈りも含まれるが、躾、挨拶、礼儀といった部分を指す。
岩井は言う。