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「サリナさんは絶対見逃さない」“無敵モード”の古賀紗理那が仲間にも容赦なかった理由…パリ切符までの壮絶12試合「人生で一番必死な大会でした」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2024/06/17 11:02
パリ五輪出場権が懸かった予選ラウンド全12試合を戦い抜いた古賀紗理那(28歳)。満身創痍だったが、笑顔で目標を達成した
自分がやるべきことはやる。同時に、周りに対してもやるべきことはやろうとアプローチする。言われる側からすれば、時にその強さに恐れをなすこともあるが、求められることは間違っていない。
中でも、事あるごとに古賀から指摘を受けてきたのが、同じNECレッドロケッツ所属のミドルブロッカー、山田二千華だ。
1つクリアしても、もっともっと、と求められる。たとえば攻撃に入る時も「もっと早く入れるよね」と言われ、安易なコースにスパイクを打ってしまうと「もっと別のコースにも打てたでしょ」と叱責される。一見すれば厳しくも感じるが、そんな古賀の“強さ”に「救われた」と山田は言う。
「コンディションが悪いし、何もかもうまくいかなくて、自分に納得がいかない。余計に中途半端なプレーをしてしまっていたんです。そうしたら紗理那さんから『その日のコンディションとか、セッターの兼ね合いもあるんだから、その日のベストを出せばいいんだよ』と。やらなきゃ、やらなきゃと切羽詰まっていたので、紗理那さんからの『その日のベストでいい』という言葉で力が抜けました。
正直に言うと、試合の中で疲れてきたりすると『今、ブロックに行かなくてもいいかな』と思ったりすることもあるんですけど、紗理那さんは絶対見逃さないから『行けたよね』って言われる(笑)。でも本当に、言われるまんま、その通りだよな、と思えるから、今できることに焦点を当てよう、と考えられるようになった。紗理那さんのような人がいてくれるのが、本当にすごく心強いです」
「完全に無意識。全然覚えていない」
6月16日、ネーションズリーグ最終日。日本は世界ランク5位のアメリカと対戦し、ストレートで敗れた。
古賀はアメリカの手堅いブロックとディフェンスの前に「相手の思い通りのところに打たれて、(自チームの攻撃も相手守備の思い通りに)打ってしまった。工夫が足りなかった」と課題を述べたが、コート内でも常に周りの選手に向けて声をかけていた。
それは「気持ちで勝とう」といった曖昧なものではなく、今何ができていなくて、何をすべきか。1つ1つを細かく紐解き、仲間たちに端的に伝える。同じNECのリベロ小島満菜美からは「紗理那の目が違う」と言われたが、古賀自身は特別なことをしたという意識どころか、そもそもどう振る舞っていたか記憶がないという。
「完全に無意識。試合中はめっちゃ必死だったから、全然覚えていない。それぐらい、とにかく必死でした」