濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「あれは本当に悔しかった…」ファンの言葉に葛藤した“闘う女優”青野未来が、女子プロレス新団体のエース候補になるまで…再会したい“4人のレスラー”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/06/11 11:04
新団体「マリーゴールド」で旗揚げ3連勝、“エース候補”と言われる女子プロレスラーの青野未来
旗揚げ戦の対戦相手、石川奈青には“お芝居の人”と揶揄された。石川とはタッグを組んだことも対戦したこともある。しかしアクトレスガールズ新体制の2年あまりで、立ち位置は大きく離れることになった。
「正直、試合前は毎回、緊張するし怖いです」
「あれは本当に悔しかった」ファンからの言葉
そう語る青野だが、マリーゴールドでは結果だけでなく試合内容も評価された。重たい蹴り、パワフルなラリアット、フィニッシュのスタイルズ・クラッシュは女子の使い手が少ないからよりインパクトがある。技の迫力だけでなく、醸し出す雰囲気には風格のようなものも感じる。それが、アクトレスガールズでエースとして悩みながら走ってきた成果だった。
「自分に自信がないタイプなんですけど、風香さんをはじめ周りの人たちにエースと言ってもらって自覚が出てきました。後輩ばかりの中で“受けて立つ”試合をしてきたのも大きかったんだと思います」
青野はあまり自己主張をするタイプではない。曰く「背中を見て感じてほしいと思っていたので」。それが気に入らないという選手もいたが、青野はリングで受け止めてきた。
「ただ、自分のファンの人にも“エースになりたいわけじゃないんでしょ。でも他にエースになれる人がいないから仕方ないよね”と言われて(苦笑)。あれは本当に悔しかった。口で言わないだけでエースの自覚も責任感もあったのに……。よくクールだって言われるんですけど、負けん気は人一倍あるんです。でも、それも伝わらなければ意味がないんだろうなと思いました」
闘志も悔しさも内に秘めてしまう。気持ちを出さず、自分が我慢すればと思い、ついには引退を決意していた。だからマリーゴールド移籍は「プロレスを始めた時と同じくらいの大きな決断」だった。自分の人生だから、自分で変えるしかないのだ。
「チャレンジするなら、環境を変えるなら今しかない。そんな気持ちでした。やめる時期まで考えていたからこそ踏ん切りがついたんだと思います」
業界最注目団体の“主役候補”に
マリーゴールドでグラウンドなど基礎から練習し直して、新人時代を思い出した。「やっぱりこれだな」と感じたそうだ。久しぶりにやってみたエクスキューズなしのプロレスは、ビックリするほど楽しかった。旗揚げ戦、後楽園ホールを埋め尽くした超満員の観客には圧倒された。
ただプロレス界に戻ってきただけではない。青野未来は業界最注目団体の主役候補に躍り出たのだ。「楽しい」だけで満足するわけにはいかないと感じるようになった。