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「やせたら可愛いのに」世間の声との闘い…“プラスサイズモデル”も務める女子レスラー・まなせゆうなの思い「ありのままの自分を愛せばいい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byL)Norihiro Hashimoto、R)Yuki Suenaga
posted2024/06/08 11:01
現役の女子プロレスラーであり、プラスサイズモデルの活動も行っているまなせゆうな
ガンプロは今年4月、DDTグループから独立した。DDTとプロレスリング・ノアの運営会社サイバーファイトはサイバーエージェント傘下。ガンプロは上場企業の庇護から抜けたことになる。
これまで会社のランニングコスト、ソリューションでできたことがすべて“自前”になる。予算獲得のためクラウドファンディングを実施すると、当初の目標額150万円に対して600万円以上が集まった。ファンは本当の“どインディー”になったガンプロを支持したのだ。
なんでも自分たちでやらなきゃいけない。だから選手たちの士気も上がった。大きい会社ではできなかったこと、言えなかったことも可能になる。
「以前、インタビューで生理の話をしたんです。女子選手は避けられない問題なので。でも原稿チェックで全カット。そうなっちゃうもんなんですかね。いろんな考えがあってカットされたんだと思うんですけど、私としては伝えたいことでした」
「やせたら可愛いのに」世間の声との闘い
これからはそうではなくなる。ガンプロは、DDTで“ダメレスラー”扱いされていた大家健が代表。ガンプロを作って「バカにされた時にヘラヘラして誤魔化すのをやめたんです」と大家は言う。まなせもそうすることにした。
「やせたら可愛いのにとか、目がもっと大きかったら、唇が厚かったらみたいなことを人生の中で数え切れないくらい言われてきて。そんなのは何も意味がないってことを伝えたいです」
まなせが言いたいことを言い、やりたいことをやると、社会的な主張を帯びることにもなる。
「それが私の役目だと思うので、どんどんやっていきたいです(笑)。見た目のことを気にする女性はたくさんいるし、体型で悩むと摂食障害になることもある。そういう人たちの世界をプロレスで変えたいですね。“そんなことで悩まなくていいんだよ”って」
最近、X(旧ツイッター)で「#デカ女ブーム」というワードが話題になった。長身だったり大柄な女性が好きだというわけだ。男からの勝手な願望という面もあるにせよ、好みなんて人それぞれで当然だ。
まなせはこの言葉に反応、写真付きで「呼びましたか?」とポストすると表示回数が100万を超えた。フォロワーも約5000人増えたそうだ。女性の“デカい”がポジティブな意味で使われることが、素直に嬉しいという。
しかし単に“ブーム”に乗ったというだけのことではないだろう。まなせは自分の体型について、自分のあり方についてずっと考えてきたのだ。だからトレンドに反応できたし、それこそ“デカ女”を肯定するために闘う気持ちがある。そしてブームが終わっても、彼女の闘いは終わらない。