- #1
- #2
ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥がネリを撃破した勝負のポイント…じつは4Rの“挑発”にあった? 元世界王者・飯田覚士が驚いた2つの理由「いや、本当のモンスターですよ(笑)」
posted2024/05/09 17:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥が、挑戦者ルイス・ネリを6回TKOでマットに沈め、防衛に成功した。絶対王者・井上のまさかの初ダウンという“波乱”から始まった注目の一戦、元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏はどう見たのか。全2回にわたって徹底解説した後編では、圧巻のKO劇にいたる勝負の分岐点を探る。<全2回の後編/前編へ>
井上尚弥の“挑発”に隠された勝負のポイント
東京ドームのボルテージがグッと引き上がった。
4ラウンド途中、ルイス・ネリのワンツーを涼しくかわした井上尚弥が不意に足を止めた。
当ててみろよとばかりに右拳で自分のアゴをポンポンと軽く叩いてみせる。続いて左拳で「来いよ」のポーズ。その直後に力を込めた右のオーバーハンドから左ボディーを放ち、ガードを下げてネリを再び挑発した。
ここに隠された勝負のポイントがあったと飯田覚士は分析する。
「まず理由の1つめとしては、もう動きを読めたという意思表示に見えました。ダウンを奪い返した後の3ラウンドで尚弥選手は試合を支配したとまではいかないとしても優位に立った。ワンツーでのけぞらし、半歩遠い距離でネリ選手のパンチもバックステップじゃなく上体だけで封じて相手の動きや軌道もほぼつかめたはず。ネリ選手は表情を変えないためにダメージがあるかどうか分かりにくいなかでも実際に戦っている尚弥選手からすれば自分のパンチが効き始めているとも感じたのではないでしょうか。だから“もうパンチはもらわないよ”と。ただ、僕はこのシーンを目にして、正直言ってびっくりしました。2つめの理由がそこにあります」
挑発はネリを置いていく「スパートの合図」?
挑発する振る舞いは、対戦相手へのメッセージもあれば、会場へのパフォーマンスの意味合いというのもあるだろう。ネリに対してどちらも含まれているとしても、肝としては綱を引き合う駆け引きの一環だったと飯田は読むのだ。