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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥vs.ネリ「いつもの尚弥選手とは違っていた?」元世界王者・飯田覚士が人生初ダウンを分析…2度目の被弾を許さなかった“断固たる決意”
posted2024/05/09 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
初回で井上尚弥が生涯初ダウン
東京ドームがボクシングで揺れた夜――。
5月6日、4団体統一世界スーパーバンタム級王者“モンスター”井上尚弥が、元2階級制覇のメキシカン、ルイス・ネリを迎えたタイトルマッチはエキサイトシーンの連続だった。初回に井上がまさかの生涯初ダウンを喫して波乱のスタートとなったものの、2回にダウンを奪い返してからは優位を崩すことなく6回TKO勝ちを収めている。ドームが沸騰したこの一戦において、勝負の岐路はどこにあったのか。昨年12月のマーロン・タパレス戦に引き続き、WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者、飯田覚士氏のもとを訪ねることにした。
絶対王者に、いつもと違う雰囲気を感じていた。
布袋寅泰のギターが鳴り響き、4万3000人からの大歓声を浴びながらの入場シーン。飯田の目から見ても気持ちの高ぶりが十分すぎるほど伝わってくる一方で、“気負い”の域に入ってしまわないかちょっとした懸念があった。
「これまでも尚弥選手の試合を見てきましたが、お客さんにあれだけアピールするように入場してきたのは初めてじゃないですかね。4万人を超える大観衆、そして東京ドームという舞台で多少なりともプレッシャーがあったのなら、それを“絶対にブッ倒してやる”くらいの気持ちに変換しようとしていたのかなとも感じました。ただ、それが良いほうに出ればまったく問題はないわけですが、逆に良くないほうに出る場合もある。まずはいつものように距離を測りながらパンチ力、軌道、動き、スピードを見定める時間をつくるだろうと思っていたのですが、試合が始まっても気持ちがちょっと前掛かりになっているところは少々気掛かりではありましたね」
いつもの井上尚弥とは違っていた?
1ラウンド、ハーフタイム過ぎに衝撃のシーンが訪れる。ネリの左ボディーをブロックした井上が離れ際に左アッパーから右を打ち込もうとしたところに、最も警戒しなければならない左フックを合わされた。がら空きになっていた顔面に食らい、リングに転がった。ドームにどよめきが走った。