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「細胞もポジティブだったのかも(笑)」高橋藍22歳が語るイタリア3季目の進化「本当の意味でバレーボールが楽しめるようになったのは…」
posted2024/04/24 17:02
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Takahisa Hirano
(初出:発売中のNumber1094・1095号[イタリア3季目の進化]高橋藍「限界をつくらないことだけはずっと意識してきた」より)
自他共に認める“ポジティブモンスター”
迷いなく、高橋藍がブロックに跳ぶ。
4月7日、イタリア、トレンティーノ。プレーオフ準決勝の第3戦最終セット。レギュラーラウンド1位の相手に対し、14対13、モンツァのマッチポイントの場面だ。
「前回負けてから、この試合のために集中して準備してきた」という高橋は、ここまで42本のスパイクを放ち、24本を決める活躍を見せていた。マッチポイントも「最後の1点はお前が決めろ」とばかりに、ブラジル代表でモンツァのセッター、フェルナンド・ジルクレリングは前衛レフトの高橋に上げ、この日43本目のスパイクを放つ。レシーブに阻まれ、1本では決まらなかったが、直後にトレンティーノの攻撃に対し、高橋も含めた3人でブロックに跳ぶ。2本打っても決まらず、ブロックに当ててからもう一度チャンスをつくるべく3本目は軟打をブロックに当ててきた。その1本を、狙いすました高橋が叩き落す。
2本決まらずとも3本目。二度負けていても三度目に勝つ。まさに“三度目の正直”を体現したラストプレーで勝利をつかむと、両チーム最多の25得点を叩き出した高橋は今季4度目のMVPに選出された。
プレーオフは3戦先勝方式で、モンツァはすでに2敗していた。ようやく1勝を挙げたとはいえ、負ければ決勝進出が絶たれ、3位決定戦に回る。いわば圧倒的不利とも言える状況で、「完璧な試合」と言ってのけるパフォーマンスを見せる。まさに逆境でこそ輝く。自他共に認める“ポジティブモンスター”はプレーオフという大舞台でも健在だった。
僕自身がこういう性格だから…
実はプレーオフ進出をかけた戦いが繰り広げられたレギュラーシーズン終盤、高橋は1月24日のベローナ戦で着地時に別の選手と交錯し、左足首を負傷した。チームの医師からは「復帰まで1カ月」と診断された。すぐにでも復帰したい気持ちはあったが、痛みも強く無理はできない。どこに照準を合わせるか。むしろケガも「今は身体を休める時期」とプラスにとらえ、トレーナーとリハビリに努めた結果、1週間程度で松葉杖も外し、2月14日のミラノ戦でベンチ入りを果たす驚愕の回復を見せた。