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井上尚弥の衝撃KOが人生を変えた?「あの一戦があったから世界王者になれた」33歳モロニーが“無敗”武居由樹の挑戦を受けた理由
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byKYODO
posted2024/04/08 17:00
2020年10月31日、WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチで井上尚弥(右)にKO負けを喫したジェイソン・モロニー
ご存知の通り、私は2020年10月、ラスベガスで井上尚弥と対戦しました。敗れはしましたが、PFPでも最強と思える選手との対戦は本当に貴重な経験でした。
自分はもっとやれると信じていましたが、KO負けは井上に試合をコントロールされた結果であり、力を出させてくれなかった相手を褒めるより仕方ありません。井上はフットワークに優れ、距離を掴むのがうまく、スピードがあり、パワフル。1、2回は積極的に攻めたかったのですが、彼の技術がそれを許してくれませんでした。逆に少し休みたいタイミングではプレッシャーをかけてきて、そうさせてくれないのです。
非常に狡猾で、巧みに罠をかけ、こちらにパンチを打たせた上でカウンターを取り、ガードに隙を作らせるといったことも上手でした。あれほどの王者と戦えたことは、私の財産になったと思います。私は“ボクシングの生徒”を自負していますが、たった一戦であそこまで多くを学べたことはこれまでにありません。
「試合が終わったら観客席でネリ戦を観る」
私が今こうして世界王者になれたのは、PFP最強の選手と戦い、そこで様々なことを学習したからでしょう。以降、よりオールラウンドのボクサーになれたという自負があります。何より素晴らしいのは井上はまだ向上しているように思えることで、だからこそ毎戦が見逃せないのです。
5月6日、自分の試合を終えたら、私も観客席で井上とルイス・ネリ(メキシコ)の戦いをライブで観るつもりですよ(笑)。