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23歳富永啓生、大号泣の理由は?「英語を話せなかった荒削りなケイセイが…」涙のウラに心を通わせた恩師の存在「打てる時はとにかく打て!」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2024/03/28 18:02

23歳富永啓生、大号泣の理由は?「英語を話せなかった荒削りなケイセイが…」涙のウラに心を通わせた恩師の存在「打てる時はとにかく打て!」<Number Web> photograph by Getty Images

NCAAトーナメントという大舞台でも躍動した富永啓生(23歳)。惜しくも敗れ、コートの上で泣き崩れた

 今でこそ富永のプレースタイルはアメリカ向きだったと誰もが自信を持って言えるが、まだ粗削りな面の方が目立った頃の話。自身のスタイルへの批判も耳に入っていたという富永にとって、NBAでも実績のある人間の強固なサポートに大きな意味があったことは容易に想像できる。

「実績ある人物に認められ、間違ってなかったと思えたのでは?」と1年生時の富永に問うと、「それはありますね」と笑い、静かにこう言葉を繋いだ。

「今までいろいろ言われたこともありましたけど、それが自分のプレースタイル。全然崩すことなくやってきた結果、ここにいられているんだと思います」

通算1000得点「“切り札”に成長してくれた」

 ネブラスカ大で腕を磨き続けた富永の2年目以降の躍進は、バスケットボールファンならすでにご存知の通りである。平均得点は5.7、13.1、15.1と1年ごとに増加し、2年目以降は断然のエースに就任。そして迎えた3年目のレギュラーシーズン最後のゲームでは、同校史上31人目の通算1000得点に到達し、そのハイペースにはホイバーグHCも舌を巻いていた。

「すごい記録だと思う。ケイセイにとって、1年目は適応のための期間だった。それが過去2年で得点の術を学び、ゴートゥガイ(=終盤の切り札)に成長してくれた。通算1000得点に到達したのはとてつもないことだ」

 何より素晴らしいのは、富永の成績アップとともに、ネブラスカ大も勝ち星を増やしていったことだ。1年目は10勝22敗だったのが、昨季は16勝16敗、今季は23勝11敗。ここで目標としていたNCAAトーナメント進出を果たし、ホイバーグHCはビッグ10カンファレンスの最優秀コーチ賞を受賞するに至った。

 快進撃はもちろん富永だけの力ではないが、その得点力なしでは絶対にあり得なかった。だとすれば、親子のように歳の離れたHCとエーススコアラーが互いに高め合った結果ともいえよう。NCAAトーナメントでの敗退後、「3年間、本当にありがとう。ネブラスカのバスケットボールを大きくしてくれてありがとう」と富永に伝えたというホイバーグHCのメッセージは正直な思いの吐露でもあったはずだ。

【次ページ】 「山あり谷ありの3年間」

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