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“現役ドラフトの星”阪神・大竹耕太郎が自主トレで「陸上競技」に挑んだナゼ…更なる飛躍のヒントは「マラソン・大迫傑」の走りにあり?
posted2024/03/01 11:02
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Hideki Sugiyama
昨年12月下旬、38年ぶりに日本一を成し遂げた阪神タイガースの一行が約1週間のハワイ優勝旅行から帰国して3日後のこと。大阪府内の陸上競技場には、早々に自主トレーニングに励む左腕・大竹耕太郎の姿があった。
阪神の選手たちはオフもイベントやメディアへの出演などで大忙しで、大竹もしかり。「さすがにそろそろやらないとやばい……」と当人が振り返ったように、V旅行の余韻もそこそこに新シーズンに向けて再始動した。
育成出身の大竹は、初めて実施された2022年の現役ドラフトでソフトバンクホークスから阪神タイガースに移籍し、昨シーズンに新天地でブレイクを果たした。
惜しくも最高勝率のタイトルを逃したものの、ホークス在籍時の5年間の白星(10勝)を上回る12勝(2敗)を上げてリーグ優勝に貢献した。
その大竹がさらなる飛躍のために自主トレで取り入れたのが「陸上競技」のトレーニングだった。
「走りが専門のトレーニングってどういうことをするんだろう」
走ることは、野球だけでなく、あらゆるスポーツの基盤にあるといっていい。
しかしながら、大竹は走ることに関して苦手意識があった。
「ピッチャーなので、ランニングのウエイトは大きい。でも、他の選手より走れる本数は少ないし遅いので、『絶対に効率の悪い走り方をしているんだろうな』という思いが自分の中にずっとありました。せっかく走るんだったら、意味のあるものにしたいと思っていました。
野球の枠組みではなく、走りが専門のトレーニングってどういうことをするんだろう、とか、どういう感覚で走っているんだろう。それを知ってみたいと思ったのが最初です」
誰しもが体育の授業で当たり前に行ってきた“走る”という行為だが、”走るというスキル”を教わったことがある人はどれだけいるだろうか? 大竹がこんな疑問を持ったのも当然かもしれない。
大竹がソフトバンクに在籍していた時に交流があったテレビマンに、箱根駅伝を走った経験がある早稲田大学時代の同級生がいた。彼に相談したところ、薦めてもらったのが陸上競技界で活躍するアスレティックトレーナーの五味宏生さんだった。
五味さんは、男子マラソンで東京五輪6位入賞した大迫傑(Nike)をはじめ、短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)、小池祐貴(住友電工)といった多くのトップアスリートをサポートしてきた。